耐震等級3の家づくり

耐震等級3の設計

近年、建築基準法で想定している地震を上回る規模の地震が、熊本地震を初め、各地で発生しています。

そんな中、これからの家づくりに耐震性を持たせた設計をする事が非常に重要となっています。

では、どんな家が地震の強いのか?

『耐震等級3の家』

これが、最低条件であることは間違いありません。

耐震等級3とは
住宅の品質確保の促進等に関する法律に基づく評価方法基準、
1-1耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)に定められている等級3の基準であり、
数百年に一度程度発生する地震による力の1.5倍の力に対して、倒壊、崩壊等しない程度を想定しているものです。

 

耐震等級3を取得した場合、長期優良住宅の認定や減税、地震保険割引制度などの優遇が受けられます。

 

では、「耐震等級」について簡単にご説明いたします。

耐震等級1
建築基準法
耐震等級2
建築基準法の1.25倍
耐震等級3
建築基準法の1.5倍

現在、耐震等級3を謳う工務店も多くあります。

ですが、この耐震等級は初めにも記載した通り・・・

  • 数百年に一度程度発生する地震による力
  • 1回だけに対して倒壊、崩壊等しない程度を想定

な訳です。
数百年に一度』ですよ?
一回だけ』ですよ?

熊本地震では、2回来てしまいました。
法律としても完全に想定外。

それにより、1回目は耐えた家も、2回目で多くが倒壊となりました。
熊本地震の被害状況は↓です。

「余震」
震度6強/5回
震度6弱/3回
震度5強/4回
震度5弱/9回
震度4/97回
震度3/295回
震度2/687回
震度1/1016回
合計2115回
(2016年9月26日現在)

建物の全壊が8151棟
建物の半壊が29072棟
建物の被害が169490棟
そりゃ倒壊しますよね・・・

ですが・・・

今回の熊本地震において国土交通省で行った調査で、耐震等級3であった16棟のうち、
14棟が無被害で2棟が軽微・小破な損傷で済んだようです。
耐震等級3、しっかりしてますね。

しかし、次も同じかどうかは分かりません。

耐震等級1である、通常の新耐震基準通りで建てられた木造住宅の「全壊」は51棟だったようです。

この熊本地震の直後、「防災学術連携体」で緊急合同記者会見を開いたわけですが、そこで・・・
日本建築学会の元会長である和田章さんはこう言っています。

『波状的に起こる地震動による建物の累積的な損傷によって、鋼構造でも被害が拡大する可能性があり、 免振・制震 構造などの新しい耐震構造の普及が必要』

 

これにより、耐震等級3の普及が急務と考えられるようになったというわけです。

益城町の耐震状況は↓な感じだったようですね
※出典:NHK

 

熊本地震では、耐震等級2の建物が倒壊したりしてるんですよ。
これは、共振現象によるものもあると思いますが、またの理由として、柱・壁の「直下率%」が低かったという理由もあげられます。

直下率
2階と1階の柱が、どれだけ同じ位置にあるのか?という割合です。
詳しい説明はしませんが、望ましいのは100%です。
力が下方向に伝わって行きやすいか?ってイメージしてください。
ラファエル設計は60%以上を目指しています。
(出典:NHK)
梁の部材表・スパン表
これは直下率が100%じゃないと、全く意味がない表です。

 

 

現在の耐震基準ですが、ザックリと説明するとこんな感じです。

極めてまれ(震度6強以上)=数百年に一度
倒壊させてはダメ
稀(震度5強以上)=数十年に一度
柱や梁などの構造に係わる部分が損傷してはダメ

 

もう一度言います。

  • 地震1回だけに対して倒壊、崩壊等しない程度を想定 しているのが現在の耐震設計基準

 

熊本地震などは、震度6クラスの地震が連続で発生しています。

地震は、1度だけ発生する訳ではございません。

建築基準法では、そんな地震に対して、

  • 逃げられる時間は倒壊しないでね

という考えのもと法律が作られているので、2回目の強地震に対しては想定していません。

いくら耐震等級3の家を造ったとしても、2回震度6クラスの地震を受けたら、1回目は見た目何ともなくても、2回目で倒壊する可能性は非常に高いです。

家は、1回目の地震でもう既に瀕死の状態にある訳です。

非常に不安な状態で過ごすことになります。


 

それでは、ちょっと整理しましょう!

耐震等級3を取得する為の検討項目【建築基準法と品確法住宅性能表示の比較】
耐震等級3をクリアするという事は、最終的に住宅性能評価を取得する為に、行政に申請する必要があります。
下記の内容が、耐震等級3を取得する為に、基準法よりも構造計算などを追加で行う内容となっています。

赤字の部分が、主に追加になる部分です。

  建築基準法 品確法(住宅性能表示)
壁量 ■必要壁量の算出
 ・地震に関する必要壁量
 ・風に関する必要壁量

■存在壁量の算出
 ・耐力壁存在壁量

■判定
 ・なし
■必要壁量の算出
 ・地震に関する必要壁量(積雪考慮)
 ・風に関する必要壁量

■存在壁量の算出
 ・耐力壁存在壁量 
 ・準耐力壁存在壁量

■等級判定
 ・耐等級(等級2,等級3)
 ・耐等級(等級2)
壁の配置 4分割法または偏心率 4分割法または偏心率(準耐力壁は考慮しない)
床倍率 なし ■耐力壁線の設定
 ・チェック(耐力壁線間距離8m)
 ※耐力壁線間が8mを超えると、この時点で耐  震等級の話は無効になります

■必要床倍率を求める

■平均存在床倍率を求める

■等級判定
 ・耐等級(等級2,等級3) 
 ・耐等級(等級2)
接合部 ■「筋かい端部」と柱・横架材との接合部のチェック

■「柱頭・柱脚」と横架材との接合部のチェック
■「筋かい端部」と柱・横架材との接合部のチェッ ク

■「柱頭・柱脚」と横架材との接合部のチェック

「胴差の端部と通し柱」の接合部のチェック

「床・屋根の外周の横架材」の接合部のチェック
基礎 ■建築基準法の告示に基づく仕様のチェック ■建物条件に基づいて、構造計算、またはスパン表より基礎の仕様を選択
①基礎形状の選択 
②基礎の各部寸法の選択 
③基礎の配筋の選択
横架材 ■建築基準法の告示に基づく仕様のチェック ■建物条件に基づいて、構造計算による断面算定、またはスパン表より選択

※スパン表を使用する場合、直下率100%でなければスパン表は意味を持ちません。
新耐震基準や耐震等級3を分かりやすくイメージしましょう
『新耐震基準』や『耐震等級3』というのは、建物の強度を強くして、いわゆる、筋肉ムキムキみたいな強くて硬い建物を目指したものです。

硬いものが割れやすかったりするように、いくら強度を強くしても、地震に対する力を
吸収』『いなす』ことが出来なければ、地震に対して真っ向勝負を挑んでいるのと同じなのです。
建物の地震に対する設計は、3種類ある
耐震
強さのみUP地震力は吸収できない
筋肉ムキムキタイプで頑張ってしまうので、何度も強い攻撃受け続けたら壊れるイメージ…
免震
地震力をかなり吸収
一番理想で有利だけど、住宅でやるにはコストがかなり掛かるのでやれない人も多い
※東京駅では、レトロフィット工法というで免震化されました
制震
地震力を少し吸収
制震であれば、力をいなしてくれる…比較的安く導入出来る製品もあるので、僕は制震をまず勧めてます
よく、住宅の耐震性がどうとか、新耐震とか、耐震補強なんて言葉を聞いた事があるかと思いますが、
これらは「耐震」について考えられたものです。
耐震等級3を目指す理由
熊本地震でも、耐震等級3以上の建物は、強いと証明されたわけです。
目指さない理由はありません。
大地震の発生する確率論を考えて、そこまでやらなくても・・・という考えは生まれません。
地震の揺れ方は種類がある
地震には、『周期』というものがあります。
その中で、建物や地盤など、それぞれが持つ周期の事を「固有周期」と呼びます。

メトロノームを想像するとイメージしやすいと思います。
ゆっくり揺れる場合、激しく揺れる場合、ありますよね?ビルなんかはゆっくり揺れるイメージつきませんか?

ゆっくり揺らすのが「長周期地震動」
細かく揺らすのが「短周期地震動」
恐ろしい共振現象
地震が発生した時、建物にとってとても恐ろしい現象があります。

「共振現象」です。

建物の揺れと地震の周期が一致すると、激しく揺れるのが『共振現象』です。

これと一致すると、耐震等級1の建物は殆ど揺れていないのに耐震等級3の建物だけ大きく揺れまくるという現象が起きます。
すると、場合によっては耐震等級3の建物の方が倒壊します。

つまり、もの凄く揺らされてしまうという事です。

長周期地震動では、ビルなどが、めちゃめちゃ揺らされる感じです。
短周期地震動では、強いものが、かなり揺らされるイメージを持ってください。

下記は耐震性のない家より、長期優良住宅が倒壊するという衝撃映像です。
ナレーションで原因が分からないという事になりますが、これが「共振現象」というものです。
ラファエル設計の家づくりは耐震+制震
建物にとって、一番重要だと思っているのが、「共振現象をさせない」という事。

皆さんもご存知の「五重塔」
五重塔は、地盤と建物の周期が一体とならない、つまり共振現象が絶対に起きない構造になっているので、今まで倒壊という事がないのです。

つまり、五重塔のような構造を家でも実現させようと、ラファエル設計は考えているのです。
構造的には同じではないのですが、「共振現象をさせない」という考えが一致という事です。

それを実現させるために、車のベンツにも使われている「サスペンション(ダンバー)」を家でも使います。
これにより、建物は耐震等級3で強くして、ダンパーで、「共振現象をさせない」「地震力を吸収する」という家にします。

詳しくは『耐震等級3+制震構造の家』でご説明します。
「地震が発生している最中でも家の中はどこよりも安全である」
という事が、これからの住宅にも必要な事なのだと思っています。
避難所生活になった時、避難所が安全とは限りません。
その理由は次にご説明いたします。
避難所が危険かもしれない
下記は、東日本大震災の時に、被災した体育館・武道館、小学校を調査に行った時の写真です。
被災した場合、避難所生活になるかもしれません。
しかし、避難所は絶対的に安全なのだろうか?

エントランスの天井が全て落下した後
メインコートの天井落下
落下した天井材やダクト類

この後、国も一定の規模の天井を「特定天井」として、新たな基準を作りました。
しかし、それは規模によって、特定天井にしなければいけないもの、しなくてもいいものとあります。
つまり、建築年数が古い体育館や施設などは、老朽化も進んでいます。
耐震補強をした建物でも、仕上なども面で、東日本大震災では大きな被害を受けました。
仕上のモルタルが落下
下記2枚の写真は小学校になります。
これも東日本大震災後、震災復旧業務を行った時に調査した時のものです。
小学校などは鉄筋コンクリート構造なのですが、仕上のモルタルは、かなり剥がれ落ち、コンクリートの壁は大きなせん断破壊をし、鉄筋がむき出しになるくらいのダメージを受けております。
コンクリートの構造体がせん断破壊

地球温暖化によって、今まで想定していなかった自然災害が各地で発生しています。
これは、エネルギーを使いまくっているのが大きな原因の1つでしょう。

強いはずのコンクリートが、これだけ壊れるのです。

硬い=壊れやすい

が証明されたような写真たちでした。

壁に斜めに大きな亀裂が生じているのが「せん断破壊」という、一番強力な破壊形式です。
それを受けたコンクリートの壁たちは、至る所でズタボロにされていました。

こういった現場を沢山見てしまうと、住宅でも大谷石などを自分の身長より高い位置に貼る事が、とても抵抗あります。

 

これらの事から、耐震等級3にして、硬くて強い建物にしても、地震に対して真っ向勝負を挑んで受け身になっても、完全無傷でいられる確率は、高くないと思っています。

東日本大震災の前後で、学校施設は50棟以上の老朽度調査や耐震診断・耐震補強業務を行ってきまして、
住宅に関しても、震災後に50棟以上の住宅の危険度判定を行ってきました。

建物の劣化状況や震災状況含めて、100棟以上は調査してきました。

 

それらの経験から・・・
やはり、耐震等級3に、「制震」という考えをプラスしたいなと、ラファエル設計は考えるのです。

 

次は『耐震等級3+制震構造の家』をお楽しみください。