高性能住宅のはずなのにエアコンに頼る家

今回は、皆さんの誤解というか、勘違いのお話をしたいと思います。

別なページでUA値の話はしてますが、まずはこちらでおさらい。
UA値が小さいほど、高性能という事になり、下記のUA値をクリアしたものが

「次世代省エネ基準」クリア!

と言えます。

ですが、前回もお話した通り、栃木県で次世代省エネ基準クリアのUA値を少し上回った所で、まったく凄くもありませんし、高性能でもなく、エアコンに頼りまくりの光熱費かかりまくりの家になります。

つまり、UA値が低い(性能が良い)という事は、冬であれば家の中の暖かさが長時間続くという事です。

 

地域区分 地域詳細(一部) 熱損失係数 外皮平均熱貫流率 冷房期の平均日射熱取得率
1地域  北海道(旭川・富良野・釧路・稚内) Q1.6 UA値0.46
2地域  北海道(札幌・苫小牧・室蘭) Q1.9 UA値0.46
3地域  函館・青森・山形・秋田・栃木県(日光) Q2.4 UA値0.56
4地域  宮城・福島・栃木県(那須) Q2.4 UA値0.75
5地域  宇都宮(4地域以外の栃木県) Q2.7 UA値0.87 ηA値3.0
6地域  千葉・横浜 Q2.7 UA値0.87 ηA値2.8
7地域  長崎・鹿児島 Q2.7 UA値0.87 ηA値2.7
8地域  沖縄 Q3.7 ηA値3.2

 

ちなみに・・・

ZEH(ゼッチ)をクリアするUA値は

1~3地域は0.4

4~7地域は0.6

です。

ラファエル設計の行うQ1.0住宅の設計のUA値は0.35前後が目安ですね。

ダブル断熱は0.48~0.5くらいですね。

栃木県の次世代省エネ基準の約半分といいますが、2倍の性能という事です。

窓の性能をあげてやれば、UA値0.26くらいの性能の家は簡単に設計出来ますが、宇都宮でそこまでお金をかけなくても高性能で快適な家づくりは可能です。

 

で!!

ですよ・・・

 

これから裁判事例にもなるんじゃないかと思うのがこの

「UA値勝負」

皆さんは、これまでの話を聞いても

「UA値が低い住宅を造ってもらえれば、冬は暖かく、夏涼しい」

と思ってませんか?

実は、半分間違ってます。

実はこのUA値、北側の外壁に断熱材を入れなくても、次世代省エネ基準ってクリア出来てしまうのです。

もっというと、玄関土間の下などには断熱材を敷き、基礎の立上りにも断熱材を敷くのが熱損失の観点からも非常に有効なのですが・・・

玄関土間の断熱材を敷かなくてもUA値って0.4とか出せちゃいます。

という事は、同じUA値0.4の家でも、土間に断熱材が敷いてある家と敷いてない家では、室温の変動が全く違うわけです。
つまり、光熱費が余計にかかるという事です。

 

また、UA値に「気密」は関係ないので、外壁部のコンセントに「気密コンセントBOX」を使用しなくてもUA値は良いままで高性能と謳えてしまいます。

 

要するに・・・

UA値がよいだけでは高性能とは言えない


って事です。

だから、UA値がよいから高性能と思っていても、入居後、気密性が悪くて冬寒いなんて事が有り得ます。

これが、裁判沙汰になるケースの1つかなと思っています。

 

UA値は宇都宮でも、ダブル断熱にしなくても普通にLow-eガラスの窓を使用したりすれば、
0.6~0.7くらいの性能は出せます。

しかし、ダブル断熱の様に、付加断熱としなければ、熱が柱から逃げていきます。

ダブル断熱
内断熱(充填断熱) 一般的にこの断熱方法が日本ではほとんどです。

 

なので、付加断熱にしないかぎり、いくらUA値が良くても、室温は保てないのが温熱環境シミュレーションをやりまくって分かった事です。

つまり、高性能なのにエアコンに頼りまくる家って事です。

太陽が殆ど入らないような所では、いくらダブル断熱やQ1.0住宅にしても、エアコンに頼らざる負えません。

しかし、頼るのが良くないという意味ではありません。

頼ってもいいけど、エアコンが頑張り過ぎないような性能にする事が大切なのです。

 

シミュレーションを繰り返して分かっている事は・・・

ダブル断熱でも太陽がほとんど入らないような敷地状況ですと、外気温がマイナス6℃の早朝、

室温は5℃くらいにしかなりません。

しかし、次世代省エネ基準クリア程度の家はマイナス2℃くらいの室温になってしまうのです

 

エアコンに頼る家というのは、自分たちが我慢をすればエアコンに頼らないという意味ではありません。

全く違います。

 

そもそも、現在の日本の家づくりは「我慢」によって、光熱費を抑えたりしている現状です。


まあ、究極の「パッシブ」は我慢とも言えなくもないですが・・・

我慢をするのは人間ではありませんよ。

機械(エアコンなど)がJET運転などをしなくても平気な家の性能が重要なのです。

 

夏の日射を考慮して、窓を小さくするというのは、個人的にはNGです。

光熱費というのは12~2月が断然高くなるのですが、大抵1月が1年で一番高いでしょう。

冬のエネルギーというのは、本当にバカ高いし、極力使わない方が地球にも環境にもよいのです。

 

太陽というのは暖房の代わりになります。

なるべく安い家を造ろうとしている人は、何故、太陽の力をメインで使おうとしないで、電気代のかかるエアコンをメインで使おうとするのか不思議です。

 

年間冷暖房費が・・・

1万円前後ならエアコンに頼らない家。

2~4万円以内ならちょっとエアコンに頼る家

4~6万円以上ならエアコンに頼る家

6~10万円ならエアコンに頼りまくる家

10万円以上ならエアコン無しじゃ生きていけない家

と言えるのではないでしょうか?

 

栃木県でラファエル設計が行うQ1.0住宅は下記の様な冷暖房費を目指して設計致します。

ちなみに、下記はエアコン1台で24時間連続運転のシミュレーション結果です。

これ、トリプルガラスではなく、ダブルガラス(複層)でこの結果ですので、トリプルにして夏の日射遮蔽をもうちょっと出来れば冷暖房費は削減できます。


最近、こういったシミュレーションをしての設計をしないと、設計にストーリー性がないなと思っています。

これらを元に、窓の位置や大きさなども考慮した設計を行います。

言ってみれば、余力を残した設計です。

あえてトリプルガラスにもしないで、この結果ですので、建築コストも削減出来ているという事です。

例えばこれで太陽光設備を載せられれば、冷暖房費はほとんどかからないという可能性も出てきます。

トリプルガラスにする為の予算を太陽光設備の一部に持っていけるのですよ。

一番最適な選択肢を見極めながら、設計をするという事です。

 

一生に一度の家づくり・・・

光熱費の事もしっかり考えた家づくりをするようになれば、栃木県も、家の中での冬の死亡率全国1位という汚名を返上できると思っています。

これまでお話した事は・・・

家事動線や子供室をどうするか?

なんて悩みよりも重要な事達です。

家づくりの最中で、このような考えをもった事が無い方、依頼しようとしている会社から説明もない場合、温熱環境と光熱費の話について、確認するようにしてください。

 

家づくりにおいて、一番初めに基礎として知識として知っていなければならない事を、今回お話させていただきました。

数千万も出して購入する家ですから、『生活の質』についてもしっかり考えられるようにしましょう!

2017年11月21日