壁内結露を防ぐ近道が何故ウレタン!?見極めポイント②

壁内結露を防ぐ近道が何故ウレタン!?見極めポイント②。

ウレタン関係ないから。

 

はい、昨日から連日お届けする「経年劣化しない建物の見極めポイント」

雑誌に載っていたその特集がちょっと無理やり感満載なので、独自の目線で、消費者が変な知識を植え付けられないように、生意気にもぶった切るブログです。

では、早速取り上げます。

 

雑誌にはこんな見出しです。

経年劣化しない建物の見極めポイント②

  • 採用されている断熱材自体の『耐水性能』に不安がないか?

雑誌の文言そのままで書いていきますね。


建物に水分を寄せ付けない事が、壁内結露対策の最重要ポイントだ。

「耐水性能に優れた断熱材=ウレタン」の特性を知ろう。


 

という事で、壁内結露に関しても、結論的にウレタンが一番いいという、訳ワカメな事が書いてあります。

 

そこで、これまたこんな写真載せる意味が何故ある?という写真が載っていました。

↓ですが、水の中に断熱材を沈めた浸水実験の写真で、
左の赤い方が多分グラスウールで、右がウレタンです。

 

下記は雑誌の文言そのまま記載します。


他の素材はやがて沈んでしまうが、ヨットやサーフボードなどに使用されるウレタン素材は浸水性が極めて低い為、沈まず浮かび上がる。

また下の模型はウレタンの耐水性をイメージしたもの。

 

プラスチック容器の左側に入った水は、中央のウレタンで仕切られた部分を境に右側へ侵入しない。
優れた防水性能を表す。

建物を経年劣化させる張本人=壁内結露
をシャットアウトする為には、原因となる水蒸気の侵入、吸湿、滞留そして極端な温度差を防ぐこと。
それには断熱材に耐水性に優れるウレタン素材を採用する事が近道の1つだ。

発泡状態のウレタンを専用設計の木枠の中に圧力を掛けて充填し製造した「FPウレタン断熱パネル」
この水に強い構造材を、建物に隙間なく取り囲むように施工する事で、壁内結露を限りなく「ゼロ」へと近づけた画期的アイテムの住宅が「FPの家」なのだ。


という事が書いてあり、そのまま転記しました。

 

まず、この特集記事を読んで、一番初めに思った事は・・・

「え!?水の中に家建てるんですか?」

です(笑)


次に思った事は、
「壁内に結露が生じる事を前提とした施工をしているから、耐水性に優れるウレタンが壁内結露防止の為の近道なの?」

 

まあ、恐らく、「夏型結露」の観点から、ウレタンを推奨しているのかもしれませんが・・・

そもそも、充填断熱の場合、それらを防ぐのは、断熱材ではありません。

外貼り断熱の場合は、蒸し返し現象は起きなくなると思いますが、木材の外側にウレタンを貼った場合によりますよね。

 

なので、壁内結露に有効なのがウレタンという持って行き方は、無理やりすぎて正直笑ってしまいます(笑)

 

まあ、仮に壁内結露が生じた場合、断熱材が無効化されるかという観点からみたら、グラスウールに比べてウレタンは優れているでしょう。

がしかし、浸水実験みたいな状況って、Q1.0住宅の工法であれば、まずありえないですし、夏型結露によって壁内に大量の水が浸入するという事も、しっかりした設計・施工をすれば、ありえません。

 

ちょっとここで、夏型結露を話すると、長くなりすぎるので、割愛します。
別のブログで解説します。
夏型結露

 

ざっくりお話すると、夏の暑い時、日射を受けた外壁は50℃近くになり、その外壁の下地である木材が熱を発し、水蒸気が吹き出す為、太陽が木材を蒸している状態ってわけです。

これを『蒸し返し現象』と呼びます。

その水蒸気が室内の方へ行き、防湿層までたどり着いた時に、キンキンに冷えた室内側の影響で、冷やされて、そこで結露するわけですね。

夏型結露は、室内側の手前の防湿層で結露するけど、その水分は通気層から排出されます。

 

  • 夏型結露を防ぐ方法はあるの?

夏型結露というのは、室内の温度が27℃とか28℃であれば、重大な夏型結露が起きる環境にはなりません。

なので、夏型結露を防ぐには、Q1.0住宅のような、高気密高断熱の家で、室温も26~27℃程度でOKな室内環境を保てるのが、夏型結露を防ぐ為の基本だと思います。

 

とりあえず、ダメな施工というのを解説しちゃいますよ。
まず、通気が重要になってくるわけですが、結構、この通気が取れないような下地を作っている職人さん、多いですよ。

基本的に、今の世の中の家作りでは、サイディングの外壁が圧倒的に多いです。

で、その多くは「通気工法」というもので、サイディングを貼って行きます。

サイディングを横に張る場合は、下地が「縦胴縁」

サイディングを縦に張る場合は、下地が「横胴縁」

となるのが一般的だと思います。

通気工法は下記の様な考えです。

通気層工法の湿気の放散・雨水の排水の仕組み(イメージ縦断面図)
通気層は湿気を逃がす役割を担います。※出典:デユポン タイペック カタログ
通気層が取れなくなるダメな施工(横胴縁)
茶色の部分が木材で胴縁と言います。
横に取りつけてあるので「横胴縁」といいます。
赤くなっているのは、矢印の向きに湿気が逃げて行かない事を表しています。
こういう施工をしちゃうなら、ウレタンは有効かもしれませんが、そもそもこんな施工してたら経年劣化以前の問題で劣化します。
通気層が取れる最適な施工(横胴縁)
窓廻りが特に、通気が遮断されるポイントなので、横胴縁をさっきみたいにぶつける人が多いんですよね。
下図のように通気が出来れば、OKです。
グラスウールでも、全く問題ありません。
通気層が取れなくなるダメな施工(縦胴縁)
茶色の部分が木材で胴縁と言います。縦に取りつけてあるので「縦胴縁」といいます。
赤くなっているのは、矢印の向きに湿気が逃げて行かない事を表しています。
先ほど同様、こういう施工をしちゃうなら、ウレタンは有効かもしれませんが、そもそもこんな施工してたら経年劣化以前の問題で劣化します。
やはり、窓廻りでこういった事が起きやすいです。
初めて付き合う職人さんにはこの辺をしっかり説明しないといけません。
僕に依頼する設計監理というのは、こういった所もチェックします。
こういった所に、住まい手はお金を出さずに、自分でチェック出来ますかね?
通気層が取れる最適な施工(縦胴縁)
窓廻りで縦胴縁を離します。
こうする事で、通気が正常に働きます。
これもまた、グラスウールでも全く問題ありません。

 

まあ、こんな感じで、施工が悪かったり、断熱・気密性能が悪い家と比較してなら、ウレタンの工法でもいいのかもしれませんが、ラファエル設計は、絶対的にウレタンを使うメリットをこの特集記事を読んでも、思いつきません。

雑誌に書かれている事は、別にグラスウールを使ったって、問題なく解決できる問題ですから。

 

新住協では、施工後の壁体内検証を数件行っています。

その記事も、後日ブログで書きますね。

結論をいうと、施工がしっかりしていればグラスウールを使った新住協の工法で全く問題ないという検証結果が出ています。

 

  • まとめ

ちょっとまとめます。

そもそも、この特集記事は、前回同様、「ウレタンは超絶最高」と言わんばかりの無いようなわけですが・・・

ウレタンに頼った家づくりをしているのかと思うくらい、一般ユーザーに対して、結論への持って行き方が、無理やりすぎます。

水に強いから、壁内結露を防ぐ方法の近道がウレタンって・・・

そうじゃないですよね(笑)

こういった内容のものを見た一般ユーザーは、多分ウレタン最強だと思い、ウレタン以外は眼中にない状態になるでしょうね。

前回の無いようにも少し触れますが・・・

グラスウールとウレタンで、両者全く同じ厚みで比べた場合、ウレタンの方が、Q値もUA値も良くなるのは当たり前です。
でも、そうはならないのが付加断熱だったりするわけです。

今回も、ウレタンを使った家づくりを否定するわけではないです。

ウレタン最強説へ持って行こうとする内容を否定したいだけです(笑)

 

「高性能な家」とか「快適な家」、「経年劣化に強い家」というのは、どの断熱材を使えばそうなるかというのは、まずあり得ないんですよ。

どんな断熱材を使っても、しっかり施工すれば、どれも同じ性能が出せますから。

適材適所というべきでしょうか・・・

皆さん、あまりこういった雑誌の内容を100%鵜呑みにしないでくださいね。

 

断熱材は特にですけど、何かが突出して、それが家全体に影響を及ぼすほどの最強のものってないですから。

 

壁内結露を防ぐ見極めポイント・・・

それは断熱性能・気密性能、外壁の通気を意識している設計がされているか?という所だと思いますよ。

2018年08月10日