『耐震性能』皆が知らない事

周期と固有周期と恐怖の「共振現象」

建物には、それぞれ「どれだれ揺れるか・揺れやすいか」という『周期』というものがあり、
耐震等級1
耐震等級2
耐震等級3(長期優良住宅)
地盤
それぞれが「周期」をもっていて、この、それぞれが持つ周期の事を「固有周期」と呼びます。

メトロノームを想像してください。

 

大きい地震が来た時、このメトロノームの様に揺れるのは低スペックの耐震等級1だと思いますか?

実は違うのです。

というより、耐震等級の違いだけでは分からないのです。

実は、地震で一番怖いのは、
地震が「今回はこれだけ揺らすぞ~」
って言って揺らしている、地震の『周期』と建物が持っている『固有周期』、
この二つが抜群の相性で、建物と地盤が一緒に揺れてしまう現象・・・

『共振現象』

耐震等級1&地盤の周期が一致すれば耐震等級1が一番揺れる

耐震等級2&地盤の周期が一致すれば耐震等級2が一番揺れる

耐震等級3(長期優良住宅)&地盤の周期が一致すれば耐震等級3が一番揺れる

これが建物破壊につながるものの1つです。

youtubeで分かりやすい実験映像が見られます。

 

 


耐震等級3の長期優良住宅でも「共震現象」が起きると耐震等級3は倒壊して耐震等級1は倒壊しないという実験みたいなものも行われていますが、
建築士会の会報記事によると、熊本地震で国道交通省が行った調査で、
耐震等級3であった16棟のうち、14棟が無被害で2棟が軽微、小破な損傷で済んだようです。

耐震等級1である通常の新耐震基準通りに建てられたら木造住宅の「全壊」は51棟だったようです。

何でも「基準」というのは最低限を守るための低スペックだと思ってます。

熊本地震の直後、「防災学術連携体」で緊急合同記者会見が開かれ、そこで日本建築学会の元会長である和田章さんはこう言っておられました。(新聞記事)
波状的に起こる地震動による建物の累積的な損傷によって、鋼構造でも被害が拡大する可能性があり、
免震・制震構造などの新しい耐震構造の普及が必要

大学の中でも東京と京都(だったかな…)の方で強度型と強度型じゃないので意見の対立があるという話を以前聴きました(^^;)


恐らくどんなものでも予測できない地震に完璧なものはないのかも知れませんが、
新築住宅なら「共震をしないような制震構造」が比較的安価にできると思う僕の中でもテーマであり、住宅設計でも取り入れるつもりです。

NHKスペシャルで熊本地震の特集が放送され、「共振現象」による熊本地震の被害の話も出ていました。
テレビでは、建物を「強く堅く」と言っていたのですが、反論してるわけではありません(笑)

物は全く同じ様な設計で同じ性能を持つ建物が造れますが、地盤の強度はどこも同じではありません。

なので、共震しちゃったら、どんなに強い構造体の住宅にしても意味がないとはいいませんが、大きな破損を受ける可能性もあります。
「強く堅く、そして力をいなす」
もしくは
「とにかく力をいなす」
こんな思いでいます。

再度・・・

耐震
強さのみUP地震力は吸収できない
筋肉ムキムキタイプで頑張ってしまうので、何度も強い攻撃受け続けたら壊れるイメージ…
免震
地震力をかなり吸収
一番理想だけど、住宅でやるにはコストがかなり掛かるのでやれない人も多い
制震
地震力を少し吸収
制震であれば、力をいなしてくれる…比較的安く導入出来る製品もあるので、僕は制震をまず勧めてます
そして制震装置に耐力を負担させないような考えで。

目指すは、許容応力度計算をした上で耐震等級3を取得して、耐震+制震のハイブリッド!
地球が破壊される規模の地震でも「震度7」になると思いますので、なかなか設計通りの地震を予想するのは難しいですよね。

基本的には「耐震」+「制震」の組み合わせは現実的なベストコンビだと思います。


facebookでお世話になっている構造設計の第一人者である佐藤 実先生にもこの話をした時に、
「仰る通り」と言って頂けました。
まずは耐震で頑張り、耐震でも負け始めて変形し始めたら制振装置が効いてくるイメージです。
耐震と制振は基本的に別々に働きます。
制振装置を取り付けたから耐震等級を下げることはお勧めしません。
と言っておられました。


建築基準法などの基準をクリア出来れば、基本的にはOKなのですが、『安全・安心』という提案という所で、家づくりを始める方の意識が高まっているのも事実です。