超高性能(UA0.29)な家なのに室温10℃だと!?

今日は、以前から話をしている

「UA値がいいと快適なのか」

「UA値がいいと暖かいのか」

を実証するお話をしたいと思います。

 

衝撃のビフォー・アフターをご覧ください!

※すんごく今回のブログは長いので、UA値などに興味がない方は途中で飽きるかも(笑)

 

今回のご紹介する話というのは、お世話になっている仲良しの先輩が、自邸を建てるという事で、そのシミュレーションをして欲しいという事から始まりました。

いくつも賞を取ったりしている凄腕の先輩なので、断熱の設計アドバイスをしたら、見事にUA値0.27という凄い数値を出した超高性能の家を設計してきました!

 

が!しかし・・・波乱が・・・。

 

栃木県の寒冷地を除いて、次世代省エネ基準クリアする為の数値は0.87

ZEHで0.6となります。

数値が小さい方が高性能となり、0.87の家と0.3の家では300~400万円くらいの差が生まれます。

 

北海道~秋田・仙台など、寒い地域で省エネ住宅を造っている人たちはUA値は0.2台に持っていってる感じですね。

 

では、早速、UA値0.27という超高性能の室温を見て見ましょう!!

↓ビフォー

最も寒い日 朝5:00 外気温-5.8℃(無暖房)

!!!!!!!??????
10℃以下!?
寒いぞ!?
最も寒い日 午後13:00 外気温+3.8℃(無暖房)

陽が出ているのに11℃!?
最も寒い日 午後22:00 外気温-0.8℃(無暖房)

夜でも10~11℃
暖かいとは言えないですよね。

 

まあ、これは外観デザインをみた時に予想出来た事です。

「多分、室温10℃前後にしかならないですよ」と話した通りでした。

原因は・・・

太陽に素直な窓の配置ではない』事。

UA値が0.27というのは、栃木県としては凄まじく良く、室内の熱が殆ど逃げないという事を意味するのです。

では何故、こんなに寒いのか?

それは、太陽に素直ではないという事で、窓の配置・大きさが適切ではない為、室内の熱を暖めるものが、家電製品の発熱量とかしかない為です。

クーラーBOXに氷を入れないと冷えませんよね?

コタツに電源入れなきゃ、寒いですよね?


そうです・・・
熱が逃げないとしても、その中で発生する熱源・熱量が無ければ、その中は暖かくなったりしないのですよ。

このシミュレーションをして言える事は、エアコンを使いまくるという事。

つまり、エアコンに頼らないとならないという事です。

 

エアコンをつければ熱は逃げないので暖まりやすくなりますが、その分、光熱費も莫大にかかります。

冷暖房費のシミュレーションをした結果・・・


24時間つけっぱなしでの年間約86,000円という結果です。
あくまでも冷暖房費です。

これでは、UA値をいくら良くしても、省エネにはならない所か、

『暖かい家建てたはずなのに寒いんだけど~~~』

状態になります。

↓の図を見てください。
『絵で見る省エネ性能』です。

窓からの熱取得が全然なく、家電や照明、人からの熱が発せられて、熱損失に対しての熱取得が半分を超えます。
残りを暖房でまかなう事になる訳です。

 

 

というわけで、太陽がどのように当たるのかをシミュレーションします。

南面に何時~何時に陽が当たるのか。

西面には1時間くらいしか陽が当たらないのか。

などなど・・・

 

窓をLow-eの断熱(取得)タイプか遮熱タイプにするか、このようにして、日射が窓にどのような影響を及ぼすのかをシミュレーションして決めるのです。

 

結構方位が振れている敷地の為、普通「南」と思われる外壁面は「南東」

普通「西」と思われる外壁面は「南西」となったりするのです。

ここで、西日が怖いから「南西面」を「遮熱タイプ」の窓にしたって話をたまに聞きますが、それは適切な判断ではないのです。

 

室温を上げる為に、ここに太陽が何時間当たるから「断熱・取得タイプ」の窓にするかとか考えるのです。

 

これらを再度アドバイスさせていただき・・・

やっぱり先輩も

「凄いUA値なのに、この結果で悔しい!!」

となり、再度プランの見直し・・・。

 

窓の大きさを大きくしたりしたので、UA値は少し悪くなって0.27→0.29となりました。

窓の種類は僕に任せてもらって、

 

新しく生まれ変わったのが・・・

こちら!!

↓アフター

最も寒い日 朝5:00 外気温-5.8℃(無暖房)

!!!!!!!??????
15℃以上!!!
寝室は17.8℃!!
無暖房です!

自然温度差10℃~12℃です!

-5.8℃の早朝、朝5時!
ママが子供のお弁当などをつくる時間だとしても、LDKは15.8℃!

UA値が悪く0.02悪くなったのに・・・と言っても0.29とかなりの高性能なのですが・・・
その高性能な為に、日中、太陽の力を失わずに済むという結果になっているのです!

流石、先輩!
アドバイスに対する理解力が凄まじく高い(笑)
最も寒い日 午後13:00 外気温+3.8℃(無暖房)

無暖房で、19℃以上に!
自然温度差約16℃!
凄いです!
最も寒い日 午後22:00 外気温-0.8℃(無暖房)

無暖房な夜でも17~18℃
自然温度差17℃前後!!

この時間から朝にかけて、1~2℃下がる感じです。

つまり、暖房を使って室温20℃あったとしたら、消しても朝には18℃くらいあるという事なんですよ!?

 

冷暖房費も見て見ましょう!
エアコン1台で24時間つけっぱなしで年間¥3万円
という結果に!!
¥56000円も安くなりました。

これって、35年ローンの建築費で考えると約150万くらいの価値に相当します。

 

 

では、窓からの熱の取得や損失をみてみましょう!

熱交換器にした事もあり、24時間換気による損失もかなり削減出来、窓の取得割合が劇的に増えた為に、
損失を補うためのエネルギーもかなり減りました。

 

いかがですか?

これこそが、本当の省エネ住宅を設計するという事であり、設計プロセスの一部です。

 

いや~しかし、屋根の高さなどまで変えて、太陽に素直な設計にした先輩も見事です。

日照シミュレーションをすると、外壁面に何時間日が当たるかなどがわかるので、非常に強力なツールです。

 

ここで、この凄まじく劇的に改善された設計と、全く同じ条件で、断熱性能だけ、

『次世代省エネ基準クリアの家』と比較してみましょう!

 

どーーーん!!Σ( ̄ロ ̄lll)

 

赤と青が先輩の家の冷暖房費
グレーが次世代省エネ基準クリアの家の冷暖房費。
夏に冷房費が少し高くなっているのは、性能が良すぎる為に、建物に入った熱が逃げていないのが原因です。

これは、ブラインドなどを設ける事で実際には改善します。

¥2000円程度、夏が高くなっていますね。

 

先輩の高性能家(UA値0.29):¥30,630円

次世代基準の家(UA値0.69):¥178,038円

桁が一個違うぜ!(笑)

 

高性能住宅にすると、¥147,408・・・

 

約15万も安くなり、次世代省エネ基準クリア!の家の、恥ずかしいレベルが理解出来ると思います。

 

今回はこんな感じの結果になりました!

 

ラファエル設計はこんな感じで、温熱シミュレーションをしながら間取りや外観のデザインを考えております。

 

UA値が良いからと言って家の中が快適ではないという事を、広めたいし、皆に分かって欲しいと思っています。

 


 

 

【おわりに(余談)】

ちなみにここの敷地は4地域という寒冷地です。

次世代省エネ基準は0.87ですが、窓を少し高いものにしたりすると、最近の工務店の仕様でもUA値は0.65~0.69くらいにはなります。

で、今回の比較対象はUA値0.69で比較しました。

年間で約15万違うという事はですね・・・

月々¥12500円の差になる訳です。

これって、建築費で換算すると35年変動のローンで¥400万くらいに該当します。

 

これが、ローンと一緒に建築費を考えるという事なのです。

次世代省エネ基準クリアの家を2000万で建てる場合と、
超高性能住宅を2400万で建てる場合と、

35年経てば、元が取れるという単純計算になる訳です。

 

冷暖房費に15万もプラスで払う事が出来るんなら、高性能な家を建てた方が、健康にもなりますし、国の医療費も削減できるんですよ。

 

次世代省エネ基準クリアという性能が、いかにヘボいのか理解出来たと思いますが、こんな性能の家に何千万も35年ローンで支払うのが馬鹿らしくなりませんかね?

 

これから、外気温はもっと過酷になっていくのは分かり切っています。

最近の猛烈な寒波が当たり前になる時代が到来したらどうなりますかね?

自分が一生懸命働いて建てた家が、息子世代、孫世代には、住むにはとても辛すぎる家になっているかもしれません。

売ろうにも、高値はつかないでしょう。

断熱リフォームが必要になるかもしれないのですから。

これが「資産価値のある家づくり」ですよ。

 

家づくりとなると・・・

家事動線を一生懸命考えたり、
子供部屋の大きさはどれくらいあればいいか考えたり、
収納はどれくらいあればいいかとか考えたり・・・

正直、二の次なのですよ。

まず、自分たちの住む家は、どれくらいの家の性能と快適性を求めるのか、

それを単なる外皮計算・省エネ法をクリアする計算をするだけではなく、

室温変動や建築費に見合った快適性が得られる設計になっているのか?

そういった事が最重要課題です。

 

シミュレーションをしたことが無ければ、「冬暖かいだろう」という想像でしかなく、何の根拠もなく、
「冬暖かく、夏涼しい」という事を言っているだけになります。
こういった計算をしたことが無ければ、「勘」も働くはずが無く、問題外と言えます。

 

自分達の買う家が、どのような室温・快適性になるのか、設計段階から分かる事だと思います。

設計者である自分にとっても、自信をもった「住宅設計」「住まい手の為の設計」が提案出来ます。

 

最近、温熱シミュレーションを依頼される事が増えてきたり、「冬暖かく夏涼しい」という家を建てたのにエアコンが全然効かなくて寒い!という相談が増えてきて、実際のお宅にお邪魔して、サーモカメラで検証したり、寒い原因をつきとめる仕事をしております。

実際のお宅調査は、サーモカメラによって、いくつも寒い原因が判明してその改善案を提案しましたが、その話はまたの機会にお話し致します。

 

もし、このブログを読んで、興味を持たれた方は、一度ご相談ください。

2018年02月01日