大工が消える?効率化の光と影
Yahoo!ニュースでタイトルの記事を読みました。
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180422-00217531-toyo-bus_all
記事を読めばわかる事ではあるのですが、ザックリと、家を造る工法に触れます。
今の時代、木造住宅は主に二つの工法によって分断されています。
一つ目は『在来工法』
木造軸組工法といいますね。
昔ながらの伝統工法です。
ラファエル設計もこの工法で行っています。
105mm×105mmの柱を使うものです。
建築士の試験も、工業高校、大学でも、製図の授業は在来工法でした。
105mmの柱なので、壁も105mmになります。
よって、断熱材の厚みも、充填断熱(内断熱)なら105mmという事です。
もう2つ目は『2×4工法(ツーバイフォー)』
木造枠組壁工法と言いますね。
ラファエル設計は、この工法は出来ません。
ハウスメーカーはこちらの工法が多いと思います。
2×6工法になると、柱は140mmになるので、断熱材も140mmになり、在来工法よりも暖かいです!と
ちょっと間違った説明をしてしまう営業さんも多いでしょう。
まあ、ここでは両者の違いを詳しく説明はしませんが、基本的に、今の木造住宅は、大工さんが柱を切って梁に穴開けて・・・みたいな事はやりません。
『プレカット』という言葉を聞いた事はありますか?
今は、プレカット工場で、柱や梁などを加工し、現場に搬入され、後は大工さんが図面に沿って、組み立てていく感じです。
まあ、プラモデルを造るイメージと言えば、分かりやすいでしょうか?
※プラモデルなんて言ったら大工さんには失礼ですけどね(^_^;)
記事ではこんな事が書かれています。
- もはや「大工」ではない?
- このところ、大工の腕が相当落ちてきている
- プレカットなら現場での作業は部材を組み立てるだけ
- 現場で木材を逐一加工する必要がなくなることは、裏を返せば墨付けや刻みといった在来工法の技術を身に付ける必要もなくなる。
これらに対して、こんな意見が述べられています。
「そうした仕事が、はたして“大工”と呼べるのか。大工とは何なのか、という話になってくる」
ですと・・・。
このような考えも一理あるでしょう。
でもね、設計士・建築士でも、昔は紙に一本一本、線を引きながら、1本、2本栓を引くたびに鉛筆削りで芯を削るような事をしながら描いていたわけですよ。
で、今は、コンピュータで図面を描く時代です。
CADってやつです。
ソフトも凄まじい進化を遂げ、詳細図は自動でコンピュータが描いてくれる時代です。
僕は、高校でCADの前身みたいなものを見た時、これからはパソコンで図面を描く時代が来るかもしれない!
と思い、その予想は見事に当たり、大学ではCADや3Dソフトを沢山学びました。
今の時代、特に知識がなくても、簡単に図面は描ける時代です。
なので、そういったソフトに頼っていると、細かい納まりの詳細図を一から描ける建築士は減るのではないか?
と常々思っておりました。
でも、今はそういう時代なのです。
いくら知識があっても、CADが使えない人がいても、正直口出すだけ、図面チェックするだけの役割になります。
古い人なら仕方がないですが、新卒で求人募集する時、そんな人は募集要項にいれないです(笑)
会社に1人いれば十分です(笑)
手書きで完成予想図が描けても、3Dで完成予想図が描けない人と
手書きで完成予想図は描けない、でも3Dは得意って人が求人できたら、間違いなく後者の方が採用率は高いはずです。
大工さんもそうですが、今の時代には、今の時代からこれからの時代の進化に、ついていけるって事が重要なのではないのかなって思うのです。
以前もブログに書きましたが、日本人は新しい考えなど、出る杭は打つみたいな習慣があります(笑)
昔はこうだった!みたいな話が大好きですよね?
別に、伝統工法や、昔から行ってきた手法を忘れろって言っているわけではないんですよ。
大工さんからすれば、昔は柱などを切らなくなった代わりに、『家具』など、見せ場はいくらでもあります。
造作のカウンターなどだって、腕のいい大工さんはキレイに造ってくれます。
つまり、大工さんの仕事は無いんじゃないか?なんて考える人は、『自然素材』を利用した家づくりをしていないんじゃないかと思うのですよね。
全て既製品を使っていれば、特に職人さんの腕の見せ所ってないですからね(笑)
真っ直ぐつけられるか?って感じの所はあるかもしれませんが・・・。
ただね・・・
昔はやってなくて、今はやっている事があるんですよ。
『断熱材工事』です。
ラファエル設計のQ1.0(キューワン)住宅において、断熱材を入れるのは大工さんです。
キレイに入れられるかどうか、気密性を高く出来るか?
って所が、昔の大工には求められなくて、今の大工さんに求められる部分でもあります。
Q1.0住宅は、充填と外側に裸のグラスウールを充填します。
内側には気密シートを張ります。
この工事が最重要工事であり、設計が絵に描いた餅になるかどうかの最重要ポイントなのです。
なので、墨付けや刻みといった在来工法の技術を披露する場面は少なりましたが、そのかわり・・・
『気密性の良い家が建てられる技術のある大工さん』
が必要なのです。
墨付けや刻みといった在来工法の技術というのが、柱などには不要になっただけで、家具やちょっとした自然素材を刻む部分には必要なわけですから、昔に求められた技術は要所要所で今でも必要なのですよね。
例えば僕が、図面に描かなくても、断熱・気密については問題なく施工できるような、技術と知識を兼ね備えた大工さんが僕にはというか、ラファエル設計には必要です。
ニュース記事では、大工さんの居場所がないというか、大工さんに頼まなくてもいいような仕事が増えたという感じで書かれていますが・・・
大工さんがボス・リーダーではないんですよ(笑)
家づくりは『チーム』です。
設計者が一番偉いとか、棟梁・大工さんが一番偉いとかないです。
以前もブログに書いてますが、みんなが主役なのがラファエル設計の家づくりです。
分からない事があれば、みんなで助け合うとかさ。
皆が同じ方向を向いた家づくりをしないと、ダメだと思っています。
誰の為の家を造っているんだ?って事です。
- 設計図に書いてあるけど、今までやってきた通りにやってしまったミス
- ハウスメーカーではやっていない事はやる必要ない
- 断熱、気密についてなど、図面に描いてくれなきゃ分からない
これって、もの凄く自分勝手な理由で、まるで設計図が説明書のプラモデル造っているんですか?って感じです。
同じ方向向いていれば、このような発言はまず出ません。
プラモデル造る感覚で家づくりをやらされているような大工さんばかりなら、そりゃ~減る一方ですよ(笑)
『やりがい』ってそこにはないですよね?
た~だ、デザインばかり重要視した建築家の無知によって納まりが悪くなるような家を造らされていたら、やりがいなんて感じないですよ。
自分が建てている家に住む家族の未来のイメージが思い浮かばない家づくりは、ラファエル設計には必要ありません。
ラファエル設計の家づくりをしてくれる職人さんたちも、設計で思い描く家族の情景を一緒に思い浮かべて、家づくりは住まい手に対して同じ気持ちで進めたい。
近いうちに、先日参加した木造住宅設計力強化合宿についてブログ書きますが・・・
家づくりって、50~120年前の人達から続く、命のバトンをつなぐリレーのようなものなのです。
命というのは、森・木の命の事です。
今、僕たちが木造住宅を建てられるのは、明治の時代から生きた人たちが、今の時代に必死に残してくれた森・木があるからなのです。
そして、50~60年以上の樹齢の木を使って家づくりをしています。
樹齢が若いと、強度が出ません。
林業を仕事としている人たちのおかげで、僕たちは家を建てられます。
60年前後以上の樹齢の木を使うというか、使わせていただくので、造る家も60年以上は持たないと、次の時代の人達へ、森や木を残せません。
そんな立派な木というバトンを受け取ったのならば、先人たちに敬意を払い・・・
資産価値のある家づくりをするのが当然と言えます。
使われた木も、とても嬉しいでしょう(笑)
例えば、こだわり野菜などを栽培している農家の人はさ、誰の為にそのような素晴らしい野菜を作っているのですかね?
自分が作った美味しい野菜を食べてもらいたいからですよね?
人間に!
犬や猫の為に、無農薬野菜とか作っている人いませんよね?(笑)
そんな思いで造った野菜とかをさ、廃棄処分ばかりのスゲー不味い料理にされていたらショックですよね?
美味しいお米作って、文房具の糊にされていたらショックですよね?
林業の人達の想いも同じだと思いませんか?
木だって可哀想です。
自分が木でさ、もしも生まれ変わったら、幸せな家族の笑顔を見られる柱とかになりたくないですか?(笑)
話を最初に戻しますが、プレカットというのはこれからの家づくりに無くてはならないものです。
別に、それによっての光と影なんてないですよ。
どちらかというと、高気密高断熱の「光」があって、かまくら以下の室温の家づくりという「影」の家づくりの方が大問題です。
大工が消える?
断熱・気密を理解した、「覚醒大工」は消えません。
これから生まれて行きます。
技術が衰える?
断熱工事や家具なども含め、構造体以外の所で大工さんが腕を披露できる家づくりをしてくださいよ。
もの凄い気密性能の数値を叩き出す「変態」の領域に足を踏み入れた大工さんに沢山出逢いたいものです(笑)
今回は、こんな感じで終わります。