令和元年一級建築士製図試験合格発表をうけて思うこと

台風で延期にならなかった人たちの話で、僕は2月5日が合格発表の日です。
今年は、正直驚愕の合格発表でした。
製図試験はランク①~④までの振り分けで、ランク①のみが合格です。
ランク②は、まあ惜しかったね
(「知識及び技能」が不足しているもの)

ランク③は、全然ダメだね
(「知識及び技能」が著しく不足しているもの)

ランク④は、失格、話にならない
(設計条件及び要求図書に対する重大な不適合に該当するもの)

となるわけだが、驚愕の理由はランク②がまさかの3%しかいなかったという事だ。

ちなみにランク①36.6%
ランク③29.2%
ランク④31.3%

 

10月13日実施の試験の実受験者数は4,214人、合格者数は1,541人となり、合格率は36.6%だったわけだけど・・・
合格率は平成30年度の41.4%から4.8%低下で、近年でもっとも低い結果となりました。


試験もとも言っている事だが、ランク③と④が多すぎる。

下記は「ランク③(III)」「ランク④(IV)」に該当したものの具体例

設計条件に関する基礎的な不適合
  • 「要求されている室の欠落」
  • 「要求されている主要な室等の床面積の不適合」
など
法令への重大な不適合
  • 「延焼のおそれのある部分の位置(延焼ライン)と防火設備の設置」
  • 「防火区画(特に吹抜け部の1階部分の区画)」
  • 「直通階段に至る重複区間の長さ」
その他建築計画に基本的な問題があるもの
「吹抜けの計画(吹抜けとなっていないもの)」等

となっているのだが、採点のポイントとなる下記を見て欲しい。

重大な不適合」に、資格学校での教えで全くもって重要視されていないPS、DS、EPSの考え方が初めて記載されている。

過去の試験ではこんな書かれ方はされた事が無い。
だから、資格学校も「大した減点じゃない」と言っていたわけだ。

 

PSは給排水、DSはダクト、EPSは電気関係の為に必要な『穴(ルート)』だ。

ちなみに、住宅では「PS」が必要です。
パイプシャフトという意味です。

ハウスメーカーの描く1/100程度の図面にはほとんどPSが書かれている事はない(笑)

ハウスメーカーの手伝いをしていた時も、PSが描かれた図面は見た事が無い。

今年は、これらの僅か1㎡のPSや、2~6㎡のDS、3㎡程度のEPS、これらの欠落は一発ランク④になったと思われる。
考えがダメなのはランク③か?

通学中、僕は常にそれらの考え方の重要性を訴えていた。

しかし、それらが一つも計画されていなくても今まで合格している人はいるからといって、『そんなの無視でいい!減点なんて大したことない!それよりも空間構成だ!』というのが教えだった。

僕は、勿論きちんと考えられましたよ(笑)

更に、ランク③以下が多い理由は、防火区画や延焼の恐れのある部分の理解力と思われる。
例えば、『防火上有効な公園』は隣地になるわけだけど、延焼って発生しますか?しませんか?
これを間違えた人もランク③行きだった感じがする。

三層吹き抜けの、一階の防火区画って、どうするか分かりますか?防火シャッターだけではダメなんすよね。
これもランク③行きへのポイントだったと思われる。

防火シャッターだけだと、閉じ込められてしまいますよね(笑)

つまり、避難のドアが必要という事です。



歩行距離はOKでも、重複距離がアウトになる人もいたであろう。

歩行距離というのは、避難の為の階段への距離です。

重複距離というのは、避難階段は2つあるので、階段①と②に逃げ分かれる為の分岐点まで、避難者全員が同じ避難ルートになるという事です。

避難距離は基本的に今回の試験で言えば60m、重複距離は半分の30mとなります。


延期試験では空間構成を死守する為に、50㎡の要求室を25㎡にしたりした人もいた。
試験は、50㎡とかの部屋が大きい為に、ワンフロアにキレイに納まらせるのが難しい要因の一つでもあるのです。
しかし、これを空間構成がキレイになるからといって25㎡とか30㎡にしたら、そりゃダメだろう!?と学校にも訴えたが、「減点」との事だった。

でも、試験元は要求室面積の不適合はダメだと今回言ってますからね。



いずれにしても、今年の試験というか、これからの試験は『そもそも法規違反』『法規分かってないだろ』という答案図面は、いくら空間構成が良くても、ランク③以下になるのだろう。

基本的に、今の製図試験は、過去の合格だった図面は不合格図面になる場合もある。

今年は屋上に『設備スペース120㎡』を要求された。
つまり、ここに繋がるようにEPSやDSなんかを考えなくてはいけない。

学校の教えである・・・
『それら何処かに描いてあればいい』
『描いてなくても小さい減点』というのは、そもそも一級建築士としての知識がないという判断をされるという事。

だって、設備計画とか電気の計画分かってないって事だよね?(笑)

DSって何の為にあんのよ!?

EPSって何の為にあんのよ!?

 

よく考えてみてよ。

例えばさ?

住宅で言えばエアコンの設置場所のすぐ近くに、室外機があるよね?

北側の室だったとする。

それがさ、室外機南側にあったらおかしいよね!?

北西の角にお風呂があって、南東の角に給湯器があったらおかしいよね?

 

資格学校の教えは、これらの考えは「小さな減点」とか言ってるんだぜ?(笑)

住宅でも良くあることだけど、ダクトが通らなくて梁に穴開けるとか、結構やられているの知ってる?

ラファエル設計では絶対にないけど。

DSがない、天井懐を確保できない階高設定って事は、こういう事になるんだぜ?(笑)


学校では、階高の設定は教えられる。
しかし、DSは無くても小さな減点という。

だよ。ほんと(笑)


過去の合格図面から、減点の比率を考えるのも重要かもしれないけど、法規や電気&設備計画などは、当たり前に適合させるものとして考える必要があるという事を常々、学校側に反抗してたけど、僕には資格学校の考え方、教え方には納得出来ない部分が多かった。

仮に不合格だったら、100万も出して資格学校へ通う事はしないと決意しました。

学校の課題が本試験に的中するか!?というのは求めていない。

どんな問題がきても、ランク①(合格)へ向かうために必要な考え方を学ぶ事が出来なければ、学校に通う、通わない関係なく、合格するための勉強の意味はない。

僕は2級建築士受験の時、独学で、4プランしかやっていなく、断面詳細図の文字だけ6枚くらい描いた程度、10年ぶりに小屋伏図が出た年だったけど、学生の時の知識で受験しましたが、本試験は20分でプラン考え、作図も40分以上残して終了し、やることなくて、伏図のハッチングをキレイに書き直すという事で時間を潰し合格しました(笑)

これが今の時代に通用するかは分かりませんが、共通して言えることは、製図においては資格学校が全てではないのですよね。

死守すべき部分、減点覚悟で捨てていい部分、これらをもっと研究出来るよう、不合格だった場合は頑張る次第でございます(^^;)

 

延期試験は、学校でもしっかり教わる『ゾーニング』がこれまでやってきたセオリー通り行かない試験でした。

ようは、部門ごとにワンフロアで納めるのは、要求面積的にほぼ無理に近く、何かの部屋を別階に移動させる必要があった所が、製図一年目の人達の最大の悩みポイントだったと思います。

学校の教えのセオリーや、こうしたい!という自分の考えを捨てなきゃ、自分で試験を難しくしてしまうのが、製図試験なのですよね・・・(^^;)

2019年12月21日