IBEC 温熱環境改善委員会に参加

帰宅したのは深夜0時

IBEC 温熱環境改善委員会に参加してきました。

 

IBECというは、建築省エネルギー機構。

国土交通省国土技術政策総合研究所・国立研究開発法人建築研究所監修で、「自立循環型住宅への設計ガイドライン」なんかを出しています。

 

で、今は東大の前真之先生がリーダーなのだ。

日本の家づくりについて、省エネ基準なども含めて、向かう方向性などを決めていくような感じです。


今回、前先生から実務者代表として3つお題を頂いていたので発表させていただきました。

・最近取り組まれた物件のご紹介(できればシミュレーションしたもの)
・周辺における温熱・エネルギー評価に関する動向
・温熱シミュレーションに関して 最近考えられていること

この3つです。

 


僕がとても訴えたい事は「UA値を単に目指す事に意味は無い」という事を伝えたいのだ。

省エネ基準で決められたものがUA値(外皮平均熱貫流率)。

地域区分 地域詳細(一部) 熱損失係数 外皮平均熱貫流率 冷房期の平均日射熱取得率
1地域  北海道(旭川・富良野・釧路・稚内) Q1.6 UA値0.46
2地域  北海道(札幌・苫小牧・室蘭) Q1.9 UA値0.46
3地域  函館・青森・山形・秋田・日光 Q2.4 UA値0.56
4地域  宮城・福島・栃木県(那須) Q2.4 UA値0.75
5地域  宇都宮(4地域以外の栃木県) Q2.7 UA値0.87 ηA値3.0
6地域  千葉・横浜 Q2.7 UA値0.87 ηA値2.8
7地域  長崎・鹿児島 Q2.7 UA値0.87 ηA値2.7
8地域  沖縄 Q3.7 ηA値3.2

 

例えば、家づくりをする、しようとしている友人、会社の同僚がいたら、これらのUA値について、我々プロ側ではなく、貴方が説明できる社会を望んでいる。

理由は、プロ側もこのUA値をキチンと理解している人がいないからだ。

例を挙げるとしたら、HEAT20のG2グレード。

これを目指せば暖かい家になると、プロも素人も本気で思っている。

一条工務店のUa値を調べる人もいる。

一条ではなく、他の住宅展示場に入っている住宅メーカーのUA値を調べる人もいる。

A社のUA値はいくつだった、こっちのB社はいくつだった・・・

これらを調べる事にも何の意味もない。

 

ちょっと、実際のセミナーを皆さんに聴いていただけている感じで説明をしよう。

まずは、UA値をきちんと理解しよう。

 

UAの「A」はaverage(アベレージ)のAである。

「平均値」

って事だよね。

 

分かりやすくイメージする為に・・・

Uは「損失」の値と考えてください。

  • 屋根からの損失U値
  • 外壁からの損失U値
  • 窓からの損失U値
  • 基礎からの損失U値

 

上記図の様な感じ。

で、図に※2という事で、換気及び漏気によって失われる熱量は含まないと書いてあるのが分かります?

 

これが、凄まじく大問題なのである。

以前はUA値ではなく、「Q値」というもので評価していた。

こちらは換気及び漏気によって失われる熱量は含む

のだ。

 

ここで、Q値の方が良かった、いや、UA値の方が均等性があるとか、どうでもいい泥仕合が始まる。

外断熱VS内断熱みたいなものだ。

これは、これらの基準をこの世に生み出している人たちも言いたいことだし、これらの数値を気にする一般ユーザーにも言いたいことでもあるのだけど・・・

これらの数値を知って、何が分かるの?

って話なんすよ。

もっと分かりやすくいうと・・・

 

これらの数値を知った所で・・・

室温は何℃になるの?

暖房エネルギーはどれくらい消費するの?

て事までは分からないのだよ。

 

今の時代は「室温」や「燃費(冷暖房費)」というものが分かるソフトが誕生しているのだよ。

 

つまり、家づくりをしている一般ユーザーの人達は、このようなQ値、UA値を知ろうとするのではなく、「室温」「燃費」を知ろうとしてください。

積極的に。

 

早い話・・・

  • 室温
  • 燃費

これらが分かれば、UA値やQ値なんて、住まい手にとってはどうだっていいですよね?(笑)

 

例えば、ZEH基準クリアしていても↓こんなに寒い家に可能性もある

 

でも、ラファエル設計なら↓まで室温を上げられる。

 

これ、UA値やQ値を知りたいと思います?

 

いいですか?

 

ラファエル設計は「無暖房での室温」を一番に考えます。

無暖房で真冬の朝18℃くらいになる事を目指して設計します。

その結果、UA値は0.27~0.34になります。

 

もう一度いいます。

その結果です。

その結果0.27~0.34になるのです。

 

はい、これらは「結果論」なのですよ。

ラファエル設計にとっては。

 

 

ちょっとここで、「換気及び漏気によって失われる熱量は含まない」という現在のUA値・・・皆さんが必死に追い求めるUA値の事について追及しようと思う。


建築知識ビルダーズの連載をさせていただいている中で、何度か登場した事のある写真のグラフ。


今日はこれらの分析の発表は端折ってしまったが、先日、鎌田先生とのコラボセミナー時に鎌田先生が何度も『んん~!?』って反応してたやつ。

これらのグラフで何が分かるかというと、熱の収入と損失のバランスです。
この家は、冬暖かくなるために、どこを強化すべきなの?というのが分かる。

 

 

僕は前から言っている、「バランスが重要」というのはこのグラフのような事でもある。

このグラフで「換気及び漏気によって失われる熱量は含まない」という事を気にして見て見よう。

画像の『24h』というのは24時間換気、『局』というのは、台所換気扇とかトイレの換気扇の事です。

設計プランというのはQ1.0住宅。
比較プランというのはQ1.0住宅ではない。

比較プランは24時間換気によって失う室内の熱は4500kwhくらい失っているのが分かるだろうか?

これね、UA値は全く同じなのですよ。

Q1.0住宅の方は熱交換換気を使っていて、比較の方は熱交換無しです。

S林業のように気密性能C値2.0~2.6とかあれば、もっと他の所での漏気も発生するのですが、今回はC値は1.0未満でそうていした結果です。

 

つまり、これらの結果からわかる事は・・・

【換気及び漏気によって失われる熱量は含まないUA値】

を追求しても全くエネルギーの削減にはならないということなのですよ。

 

ラファエル設計は下記の様に断熱材の厚みを決める際、QPEXを使用して、暖房エネルギーだどれだけ減るのかを確認しながら設計しています。

下記は基礎断熱にした時、内側だけでやるか、外側と内側でやるかを検討しています。

画像の下に暖房エネルギー負荷などが書いてありますよね?

ここの部分が重要なのですよ。

窓に関しては下記です。

例えば窓の高さをH900mmからH1200mmにしたいけど、それだけエネルギー負荷が増える?みたいな事もきちんと根拠を確認して設計しています。

 

温熱診断の相談でも良く来るのが、「窓の大きさを決めて欲しい」です。

こういった設計をしない、若しくは出来ない住宅会社に、よく依頼する気になれますよね。

だって、数千万出して買う家ですよ?(笑)

 

ブレーキの効きを確認しないで車売るのと同じじゃないですか?

そして、ブレーキの効きがよいのか、ラファエル設計さん確認してください!って依頼されるようなものですよ(笑)

 

話を戻しますが、『暖』というのが、失った熱を、暖房によって取り戻さなければならないものを示すものです。

Q1.0住宅は、失う熱が少ない為、取り戻す為の暖房も少ない。

 

これらの理由から、G3などの凄まじいUA値を目指すことを僕はしない。

UAどうこうより、何が一番損失してるんだ?という事を知らなければ、

『魔法瓶の家』
『冬暖かく夏涼しい』
『エコハウス』
という謳い文句の家は、被災して電気が使えない状況下では勿論のこと、栃木県などの地域は特に「エアコンをありきの」詐欺住宅となる危険性を秘めている。

 

しかしながら、懇親会は食べ放題、飲み放題の中華でとても美味しく、前先生たちや研究者の方々、ソフト開発の方々との話はとても楽しかったです。

 

2019年10月24日