「プロでもウソ発信」ネットの建築情報、見抜き方
「医師でもウソ発信」 ネットの医療情報、現役医師が教える見抜き方
というネットの記事を読みました。
今回はその内容ではなく、タイトル通り、プロでも『ウソ発信』という事について述べたいと思います。
どんなものかというと・・・
『夏涼しく、冬暖かい』
『冬暖かく、夏涼しい』
『エアコン1台で暖かい家』
これらについて述べたいと思います。
よく、新築の完成広告などにうたい文句で入っているものです。
これ・・・
ハッキリ言って、言ったもん勝ちみたいな危険性があるのを知ってもらいたくて、書く事にしました。
まず・・・
『夏涼しく、冬暖かい』
『冬暖かく、夏涼しい』
どちらも同じ事ですが、これって本当に間違っている会社がとても多いです。
結論を先に申し上げますと、そのうたい文句通りになっていないという事です。
ダメなパターンでどんな感じになっているかというとですね、
- 充填断熱(厚み100mm)で窓がトリプルサッシ
- ウレタンの断熱材で隙間なく!窓は樹脂サッシ
- 次世代省エネ基準クリアの家
- 外断熱だから暖かい
- ダブル断熱(付加断熱)だから結露もしないし暖かい
みたいな感じですね。
何がダメなのかというと・・・
『夏涼しく、冬暖かい』『冬暖かく、夏涼しい』
というのは、何か2つ3つ部分を性能UPしただけでは、実現不可能だという事です。
- 充填断熱(厚み100mm)で窓がトリプルサッシ
- これだけでは、壁から熱が逃げていく量が大きいです。
何故なら、ヒートブリッジ(熱橋)が防がれていないから。
2x6工法で断熱材140mmとかになったとしても、同じで、窓ガラスをトリプルにしようが室温は保たれません。 - ウレタンの断熱材で隙間なく!窓は樹脂サッシ
- ウレタン=暖かいと勘違いされている方も多いですが、木が伸縮したりすれば隙間が出来ます。
また、ウレタンだろうが、上記と同じでヒートブリッジを防がなければ、窓が樹脂だろうが熱は逃げる一方です。 - 外断熱だから暖かい
- 外断熱ならヒートブリッジは充填断熱よりも防げますが、それだけではダメです。
例えば、外断熱+窓をトリプルや樹脂窓にすれば大丈夫か?と思われるかもしれませんが、熱が逃げるのは、
天井面や床面にもあるのです。
なので、ダクトが沢山通る天井面に天井断熱をしてみたり、床断熱で省エネ基準ギリギリの厚みの断熱材が入っているだけだとしたらこれまた同じ事で、暖かいとはなりません。
気密処理がきちんとされていなかったり、断熱材の施工が悪ければ意味がありません。 - ダブル断熱(付加断熱)だから結露もしないし暖かい
- これは、ダブル断熱をすれば暖かいと思っている人が沢山いるのが問題で、これも、上記の外断熱の話と一緒で、ダブル断熱にしただけで暖かくなるはずがなく、結露の問題も、冬寒いからと言って24時間換気扇などを止めてしまうと結露は100%起きます。
ダブル断熱って、結局壁だけなのですよ。
天井断熱が150mm程度しかなかったり、気流止めがしっかりなされていなければ、天井面からガンガン熱は逃げて行きます。
少しはお分かりいただけたでしょうか?
要するに、『夏涼しく、冬暖かい』『冬暖かく、夏涼しい』ってのは、断熱・気密・換気などの施工がしっかりとなされているもので、それらがバランスよく設計されていないと、そうにはならないという事なのですよ。
そうしないと、暖房が全然効かなかったりするわけです。
恐らく、ハウスメーカーで建てた人は、最近だとしても、エアコンがあまり効かないか、効いてもそれはリビングなどだけで、トイレや洗面所は極寒だったりするはずなんです。
ラファエル設計は、壁は100%付加断熱で、
高性能グラスウール充填105mm+高性能グラスウール外105mmで行っております。
更には、裸のグラスウールで、0.2mmの気密シートを別張りしています。
天井は300mm断熱、基礎断熱で全面に断熱材を敷いています。
ダクトや配管、金物が外部に貫通する所は、ウレタンでヒートブリッジを防ぎ、窓廻りも気密・断熱性を考慮しています。
以前は充填セルロースファイバー+外EPSで行っていましたが、Q1.0住宅マスター会員となる為に、燃えやすいEPSは使用しない事にしました。
燃えやすいと言っても、きちんと防火認定を取得した工法で行っていたので、基準法をクリアしています。
次に『エアコン1台で暖かい家』ですが、これまた勘違いしている人が多いのですが、夏も冬も一家に1台だけエアコンがある訳ではありません。
夏用・冬用と2台購入する必要があると思います。
大抵は、冬用は1階で夏用が2階になると思います。
理由は、暖かい空気は上昇し、冷たい空気は下降するからですね。
真夏、2階が地獄の様に暑くなるのは、屋根面の断熱性能が悪い証拠ですね。
この手のオープンハウスに行った時、必ず見て欲しいのは床点検口からの基礎断熱の状況です。
床断熱の場合は基礎に断熱はされていませんが、基礎にウレタンを吹く事が結構多くなっているのですが、問題は次のポイントです。
赤い部分の様に、外周部にぶつかる基礎がある場合(アルファベットのTになる場合)、そこにも断熱材を折り返さないと黄色矢印の部分から熱が逃げて行きます。
基礎断熱の意味があまりない状態です。
スラブ面も、省エネの計算上は45cmまでしか計算に含む事が出来ない為に、45cmだけ断熱材を敷くのでは、効果が薄いのです。
ラファエル設計では、このスラブ面を全て断熱材で敷き詰めて、コンクリート面が見えないようにします。
壁面をウレタンで断熱する場合、基礎もウレタンで断熱を行う場合が多いと思います。
そんな時、赤色の部分を断熱してない事が多々あります。
ここはコストにも結構違いが出てくる所です。
安さ勝負の家づくりでは、ここら辺はきちんとやっていない事が殆どでしょうね。
ちなみに、UA値の計算でこの赤色をやったものとやっていないものでUA値は変わらない可能性が高いです。
やってもやらなくてもUA値0.5で変わらず・・・みたいな。
特に、玄関で基礎の立上りをやらない事がほとんどという悲しい現実があるのですが、これもUA値にはほとんど影響しない為、例えば同じUA値でも、当然しっかり断熱材を入れている方が室内の温度は高くなります。
やってなければ、玄関はとても寒いような状態にもなったりします。
なので、土間・玄関と室内が一体空間のような感じですと、玄関の床面に室内の熱が奪われたりして、暖房の効きが悪くなったりします。
玄関というのは、小さい面積ながら、玄関ドアや採光の為の窓がついていたりするので、熱の損失がとても大きい部分でもあるのです。
よく、玄関ドアだけめちゃ性能の高いドアにしている会社もありますが、土間のヒートブリッジを防がない事には、本来の効果を発揮できないでしょう。
熱が損失する部分というのは・・・
- 基礎
- 床
- 外壁
- 窓
- 天井
- 屋根
- 換気
です。
どんなに凄まじい高性能な高断熱住宅を造ったとしても、外気温0℃ならば、0℃に向かって室温は下がって行きます。
ですが、家の場合そうはなりません。
理由は、室内で発生する「熱」がある為です。
その熱とは・・・
- 照明
- 家電製品
- 人間
などです。
それに加えて、室内の温度を上昇させるには【太陽】が必要です。
なので、窓じゃ弱点だと言って、窓を小さくした家の場合は、太陽以外の熱やエアコンの暖房に頼るしかなくなるわけです。
これらの熱を如何に逃がさないかというのが『高気密高断熱住宅』という物です。
では、これらの事を絵でお見せ致します。
【設計】
Q1.0住宅レベルの
UA値0.29の家
VS
【比較】
次世代省エネ基準クリアの
UA値0.69の家
※UA値は小さい程高性能です。
Q1.0住宅の方は、暖房負荷が2,235kwhに対し、
次世代省エネ基準の方は13,996kwhもあります。
これが光熱費にどうかかわってくるかというと・・・
冷暖房24時間連続運転
【Q1.0住宅】
暖房費24,231円
【次世代省エネ基準住宅】
暖房費173,611円
その差、約15万円です。
上部は栃木県の中でも寒冷地での設定です。
例えばこの次世代省エネ基準クリアという家が宇都宮だとして
『夏涼しく、冬暖かい』
『冬暖かく、夏涼しい』
とうたっているならば、省エネ基準UA値0.87に対して0.69ですから、結構余裕をもってクリアしているので、そうだと思っちゃいますよね。
Q1.0住宅の方は、
- 基礎
- 床
- 外壁
- 窓
- 天井
- 屋根
- 換気
全てにおいて、結構細かくヒートブリッジを防ぐような設計をしています。
それもグラフで見て見ましょう!
『損失』を補う為に、どれくらい『取得』があればいいのか?という考えで見てください。
Q1.0住宅(設計プラン)と次世代省エネ基準住宅(比較プラン)で、それぞれの「取得」を見てもらうと分かりますが、「暖」というのが暖房です。
暖房以外の取得はほぼ同じという事が読み取れますか?
次に『損失』を見てください。
比較プランである次世代省エネ基準住宅は、外&窓からの損失が、設計プランのQ1.0住宅に比べて、
倍以上大きい事が分かりますか?
Q1.0住宅はダブル断熱(付加断熱)であり、次世代は普通の充填断熱です。
始めの方にご説明しましたが・・・
窓だけトリプルにすると、窓の損失が減りますが、「外」の部分は変わりませんので、外に対する損失は大きいままです。
これが、どれかの部分だけ性能UPしてもダメという事なのです。
仮に、窓の性能を上げれば次世代省エネ住宅のUA値は0.69から0.5台まで減るでしょう。
でも、外からの損失が大きいですので、
UA値が良くでもエアコンの効きが悪い
思ったより寒い
なんて事が起きるわけです。
オープンハウスに行って、「窓」に対する性能アップしか話ししてこない会社は、今まさに話している通りの
「窓の部分のグラフを下げる事しかやっていない」
という事なのですよ。
窓が弱点というのは間違っていません。
ただ、窓というのは、ガラスと窓枠で成り立っていまして、窓の熱の伝わりは両者を合わせた数値になっているのです。
窓の性能を高くしても、窓廻りの断熱気密処理がしっかりなされていなければ、そっちの方からも熱は逃げます。
逆に、窓が弱点といって、窓を小さくすれば『窓の取得』は減りますので『暖房』のグラフが増えます。
そうすると、暖房費はUPしますよね?
じゃあ、窓はデカく!!!
となりそうですが、そうなると今度は「夏」に対しての『冷房負荷』を考えなくてはなりません。
高断熱住宅になれば、夏の日射熱が侵入しては、室内はオーバーヒートしてサウナ状態になります。
だからこちらでも、そのような事が無いようにと窓を小さくしたがる人が沢山いますが、
そうなると、さっきの話に戻って、窓からの熱取得がないから暖房費が上がるという事になります。
つまり・・・
日射遮蔽と日射取得
をしっかり考えられない家は問題外であり、設計者としても大問題です。
この手の話は、建築のプロの人に話をしていても、頭がパンクします(笑)
理解すれば簡単なのですが・・・
日射遮蔽とは、熱を遮る事であり、外付けブラインドや断熱カーテン、オーニングなども有効です。
日射取得とは、太陽を味方につける事です。
で、こう考えれば簡単な話だと思いますが、後の問題はコストです。
お金ですね。
例えば、窓を全部遮蔽タイプではなく「取得タイプ」にすれば、いいじゃーん!
となり、
夏は全部外付けブラインドつければいいじゃーーん!
となる人がいますが、これはクレイジーです(笑)
どんだけコストUPするんだ?という話ですよ(笑)
たまに、東西の面に窓が沢山あり、冬の為に窓を取得タイプにしました!っていうプランの相談をうけますが、
外付けブラインドなどを設けられない場合は、カーテンなどになる訳ですけど、
カーテンって結構高いですからね!?
ニトリや通販などで自分で揃えれば安くはなるでしょうが、この辺の事まで提案出来ないと、施主様に余計な出費を生み出す原因にもなるのですよね。
ここまで、少し難しい話になりましたが、これらを理解しなければ、ハウスメーカーや工務店の言いなりになってしまい、住んでから不満爆発という結果を歩むことになる確率がとても高いです。
ドラクエで例えるなら・・・
「勇者の鎧」という最強防具は装備してステータス(UA値)は良くなっているけど、
勇者の盾は未装備、
武器はこん棒・・・
故に寒さという敵を倒せない。
「こごえる吹雪」攻撃食らいまくって、回復(暖房)いくらしても回復できない・・・
みたいな家が多いように思います。
何度も言いますが・・・
窓やドアの性能が良ければ、その家はすごく性能が良いと勘違いしてはいけません。
U値が1を切るようなサッシやドアを設けたとしても、日射取得が出来なければ熱源は家電か人間などしかなくなるので、外気温度差はさほど大きくならないので、住んでみると思ったより光熱費かかるという現実。
結局、窓が弱点と言って窓だけ性能上げても、床・壁・天井の断熱がザルなら無駄に金掛けてるみたいな感じなどが分からない。
高気密高断熱の家というのは、『小さな積み重ねとバランス』なのですよ。
ドラクエやFFでいうならば、中途半端な装備でラスボスに挑んでも全滅させられますよね?
ワンピースで例えるなら、ルフィだけでは海賊王になれませんよね?
ゾロやサンジやナミやチョッパー、ウソップ、フランキーやロビンやブルックがいなくては海賊王になる為の旅は出来ません。
どんなに素晴らしい仲間がいても『船』が無くては海は進めませんし、
性能が良くなくては新世界は航海出来ません。
つまり、船という名の命の基本仕様である「断熱性能」が良く、その船で旅する仲間がしっかりした強さが無ければ、ダメなんですよ。
ラファエル設計が行う温熱シミュレーションは、航海士であるナミのような役割です。
その航路で行くのが住まい手にとって最適なのかを見極めるのです。
ネットの情報などに惑わされない為には、これらの命の基本仕様の概念を理解するしかありません。
今回のブログが、家づくりをしている方々の道しるべ(ログポース)となってくれることを願います。