UA値が良い=家の内外温度差が大きくなるわけではない

始めに、UA値とは『外皮平均熱貫流率』を言います。

このUA値問題に関する内容は、色んな視点からブログ等で書いてますが、先日発売になった、ラファエル設計も掲載されている『北関東の高断熱住宅』の書籍からピックアップしてみます。

新住協のQ1.0住宅を判定するのにも使用する「QPEX」というソフトで省エネ計算を行うと、

【自然温度差】

ってのが分かります。

それを見て見ましょう!

まずは表の見方です。

 

ケース1
まずは、下記の2社の性能の違いから見て見ましょう!
Q値もU値(UA値)も似たような感じ。

UA値0.3W台 自然温度差7℃台

どちらも数字が低い方が優れた性能です。
上の画像の会社の方がどちらも数値が低いので、性能としては優れていて、自然温度差も優れた性能を表していますね。
まあトリプルガラスを使用しているのでQ値もU値も良くなるのは当たり前の結果と言えます。
ケース2
こちらのケースはQ値もU値も凄まじく良い性能であり、国の基準を圧倒的に凌駕している性能です。

赤線をよ~~く見てください。
上はQ値が勝っていてU値は下に負けてます。
※勝ち負け判定をするわけではなく、分かりやすいようにこのような表現をしています。



おや?
上下の性能(Q値・U値)ってほとんど違いませんよね?
しかし、自然温度差が上は9.22℃もあるのに、下はケース1と同じ7℃台です。
ケース1よりもU値は0.143Wも低い数値を出していて、北関東でU値0.2台って、北海道などで建てる高断熱レベルの数値です。

何故でしょうかね?
理由は最後に説明します。
ケース3
ラファエル設計登場です(笑)

このケース3は、これまでのモノと比べると数値の面では若干悪くなりますがZEHをクリア出来る数値はちゃんと出ています。

では見て見ましょう!



おやおや!?
U値はラファエル設計の方がいいけどQ値は下の会社の方がいい。
それよりも自然温度差がかなり違いますよね!?

3.33℃もラファエル設計よりも大きいです。
というか、ケース2の下の会社の比べて倍の性能をもつケース2の方が自然温度差が負けてますね!!

不思議な事が起きまくっています(笑)
理由は簡単というか複雑なので、少しづつ解説しますね♪
まずはこのケース3の違いから説明しましょう!
まず、「換気方式・回数」って所がQ値の上の欄に書いてありますのでご覧ください。

ラファエル設計は第三種換気で、換気回数が1時間に0.5回
下の会社は熱交換で回数は0.3回

第三種というのは、皆さんも経験あると思いますが、給気口から冬は冷たい風が入って、トイレなどにある24時間換気扇から排気するというシステムです。さらに、0.5回換気するので、暖められた空気も排出されてしまうので、自然温度差は当然低くなります。

ちなみに、0.5回というのは、建築基準法で決まっている回数です。
シックハウスなどの対策の為ですね。

下の場合は熱交換なので、冷たい空気を温風に変えて室内へ取込んでくれます。
さらに、換気回数も0.3回と少ないので、室温は保たれます。
これがまずケース3の大きな違いの1つです。

また、この家は、色んな所から日射を取得出来てるんですね。
なので、窓もトリプルでもなく、U値も0.55、Q値も約1.9なのに、このような自然温度差を出せてるのです。
U値の下にη値が2.5となってますよね?
η(イータ)と読みます。
日射取得率なので、数値が多い方が日射を取得出来ている事になります。

ラファエル設計は1.5ですので、性能的にはラファエル設計の方がいいのですが、このように自然温度差の話になると、勝敗が逆転するのです。

ちなみに、このη値(平均日射熱取得率)は大きい窓を設けると値が大きくなって、栃木県あたりの地域ですと、3以下にしなくてはいけません。
平均日射熱取得率】なのであくまでも平均です。

つまり、夏が考えに入っているからです。
冷房負荷になるって事です。

ちなみに、ラファエル設計の性能データ表は一番数値が低いですが・・・
『年間の光熱費』は約¥13万円となっています。
これは、実際に1年住んでの結果です。
U値が約0.5なので、エアコンを自動で24時間運転していても、動いてるか分からないそうです。

実際に暖房つけて日射も入ると寒い日でも27℃くらいになってしまうので、暖房は消してしまうとお客様は話しておられました。
ケース1からケース3までの自然温度差の勝者の比較
優勝
【ケース2】
同率準優勝
【ケース1】

同率準優勝
【ケース3】
まとめ
如何でしょうか?

UA値勝負というのが如何に無駄というか、あてにならないか・・・。

ケース1は熱交換で換気回数0.5回なので、自然温度差が低いのだと思われます。
よって、同じ0.3回で計算すれば、ケース3が3位となるはずです。

勘違いしてはいけないので補足しますが・・・
ここに記載されている自然温度差が大きい方が性能がいい=光熱費が安くなる
わけではないという事です。

η値が大きく、冬の暖房の手助けになるという考えだけであればよいのですが、夏の冷房負荷をしっかり考えなければ、光熱費は冷房代が夏にかかるという事になります。

つまり、ケース3だけでお話すると、ラファエル設計の家は冷房代が少ないという事ですね。

今回のブログで何が言いたいかといいますと、タイトル通り・・・
【UA値が良い=内外温度差が大きくなるわけではない】
という事です。

そして、UA値をよくするためにトリプルガラスなどを使わなくても、安価で光熱費のかからない家は設計出来るという事なんですよ!!

温熱設計というのは、窓の種類によってもUA値は大きく変わってきますし、
換気の方式や回数で自然温度差が大きく変わります。

適材適所という言葉があるように、家を建てる地域・場所によって、これらの設計は大きく違うという事です。

だから、UA値勝負になっているような今の風潮が間違っていると僕は言いたいのです。

窓が弱点だからといって、窓を小さくしたり、無くしたりすれば、UA値はどんどん下がります。

仮に、窓が全くないUA値0.1という凄まじい性能の家があったとします。
しかし、無暖房では、太陽の力を全く借りる事が出来ないので、冬の光熱費がドンと高くなるのですよ。

だから、UA値を小さくするために窓を小さくしたりする考えは、時に大間違いになるのです。

UA値が小さいから性能はいいですよ!なんて説明受けて、家建てて住んでみたら・・・

思ったより寒いぞ!?

ってなるのは目に見えています。

やっぱり、実際に建つ家の周辺環境などを考慮して下記の様な日当たりシミュレーションをしなくては、真実というか、目指すべき道は見えてこなくて、ゴールなんてたどり着けるわけもないのですよね。
QPEXでいう、自然温度差で1℃違うと灯油に換算すると100ℓの差があるのです。

今、ラファエル設計が初めた『温熱環境の見える化』ですが、今回のQPEXでデータ出したお宅の時代は室温変動をシミュレーションするソフトが出て無かったんですよね(^_^;)

その時に存在していれば、もうちょっと光熱費を削減できる設計が出来たのかもしれませんが、年間光熱費13万というのはとても良い性能なんですよ♪
Q1.0住宅であれば大体10万前後って感じです。

光熱費が元々削減できるQ1.0住宅なら、太陽光載せれば、逆に儲けが出るという事にもなりますね(笑)

まあ、兎に角、UA値ってのは、土間に断熱材入れて無くても言い数値が出てしまったりするので、実際の温熱環境に反映されるのかっていうと、ちゃんとシミュレーションしない限り、あまりあてにならないんですよ。

UA値やQ値っていうのは、あくまでも設計段階での目安であり、一番大切なのは、気密をしっかり取った施工が出来という『施工精度』が何と言って大切なんです。
机上の空論にならないようにするのが大変なので、施工する人の知識なんかも本当に重要なのです。


間取りをしっかり考えるのも重要なのですが、目指すべきゴールという名の温熱環境が数値や結果で見えた設計をするのが一番初めの段階なのですよ。

もう、これからの時代は温熱環境の設計が出来てこそ、住宅設計を仕事として出来るものだと考えています。

ただ間取りや外観デザインをお洒落に考えるのが設計という時代ではなくなりましたよね。

そこに温熱環境・省エネなどの要素も入らないとね。

温熱官許の設計をして、耐震性も考えて、
それらが「設計料」として反映されないと・・・
そして、その設計料を払う価値があるクオリティの高い住宅設計を目指して、日々精進していきます。

 

後日、こちらのブログを書きました。

超高性能(UA0.29)な家なのに室温10℃だと!?

 

2018年02月02日