ラファエル設計が住宅設計で使うソフトは全部で10種類!
昨日、【構造塾 特別編】に参加。
『木造の耐震補強の基礎と実践』で最後は特別サービス的なセミナーも聴くことが出来ました!二次会は家づくりのマニアック軍団の人達の集まり!
構造的な考えで、最近生まれた疑問も佐藤先生にいくつか質問する事が出来たので、解決されました!
そんな中、数名の方々から・・・
どのようなソフトを使っているのか?
どのような使い方をしているのか?
そんな質問があり、お話させていただきましたが再度、ラファエル設計の使い方をお話したいと思います。
- 家を設計する際に、使っているソフトは全部で9種類です。
見積もりソフトを入れると全部で10種類ですね(笑)
ソフト代を合計すると、約440万円くらいの設備です(笑)
セット価格などで安くなっている部分もあります。
それぞれ単体で揃えるともっと高額になります。
では、使う順序的な形でご説明致します。
- ①ebifit
- 性能数値シミュレーションコスト試算表で、目指すQ値、UA値でどれくらいの予算が必要になるのかを算出してくれるソフトです。
どちらかというとこのソフトは、住まい手側の要望をこれだけ入れると、こんだけの金額になるよ!という提案の仕方というか、目安の表示になりますかね。
下記は、まだキチンと設定していないデータですが、窓が取付不可となっています(笑)
ラファエル設計も、自社での建築棟数が増えてくれば、結構ニアリーなデータになると思っています。
必要な費用の入力が結構細かく必要なので、自社のデータを蓄積していくと、かなり使えるソフトだと思います。
そのようなソフトがなくても、坪いくら必要ってデータが自社管理出来る場合は、必要ないかもしれませんが、あくまでも建築初期の費用算出の面で、使えると思います。
正直・・・
弊社はまだ使いこなしていません(;´∀`) - ②マイホームデザイナーpro9EX
- これは、間取りや外観パースを簡単に作成でき、お客様もとてもイメージしやすいので、実施設計まではこのソフトがメインです。
下記は増築部分の建て替えですが、間取りも楽に変形でしますし、「間取り」をお客様の前でサクサク作れるので、その日の打合せで色々変更とか出来ます。
間取りを少し立体的に見せる事も出来るので、「平面図(間取り図)」を見ても、立体的にイメージ出来ない方にも同じようなイメージの共有意識を持つことが出来ます。
外観パースも一瞬で出来ます。
下記は、総ヒノキで依頼された時のもので、既存の住宅は黒い瓦屋根に白い外壁なので、一体感を持たせなくてよいかどうかと言うイメージも共有しやすいです。
ちょっと物件を変えますが・・・
同じく内観パースも外観パースも一瞬で出来ますので、LINEなどを使って、お客様に送れば、紙に出力するよりも手軽でキレイに表現出来ますし、お客様が時間ある時にちょくちょくその画像を見ていただけるので、変更が必要かどうかもイメージしやすいと思うのですよね。
下記はLINEで送る時の画像です。
下記は外観パース下記は実際の竣工写真。そんなに変わらないですよね?(笑)
影の当たり方も、大体合っていますよね?
あと、朝6時にキッチンに立った時に「朝日を浴びたい」というお客様の要望にも、シミュレーションで確認する事が出来ます。↓でキッチンとか壁に朝日が射しこんでいるのが分かりますかね?
ちなみにこれらは、春夏秋冬確認できます。
単に内観パースや外観パースを使うだけでなく、こういった日照シミュレーションも出来るのもありがたいですね。 - ③ホームズ君(省エネ)
- 省エネ住宅の基本は、UA値を低くするために目指すものではありません。
冬は、窓からの日射をどれだけ取り込んで、逃がさないという設計が出来るかが、省エネ住宅を造るポイントになって来ます。
その為に使用するソフトがホームズ君です。
皆さん、省エネのソフトは、UA値やQ値を出す為のソフトとしての認識が高いようですが、それは違います。
UA値やQ値なんて、結果論でしかありません。
それぞれ、ラファエル設計が使用するソフトにはそれぞれ役割があるのですよね。
ホームズ君を使うと、窓の設計が容易になります。
間取りが決まる前に、方位から、どの辺に窓が欲しいのかを把握する為に、まず、使うのがホームズ君です。
下記は、夏の時期に北側に日射があるのかをまず把握するシミュレーションです。
それにより、7:00~10:00の間だけ、北側に直射日光が当たる事が把握できます。
下図は、隣地の建物からの影の影響がどれくらいあるのかを把握する事が出来ます。
このようなお宅は、南側よりも北側・西側の方が環境としては良くなります。
それによって、デザインや間取りの配置も、この家独自の発想となります。
こういった事を、設計者である自分自身が理解して設計しないと、ダメだと思うのですよね。
下図は、東側の窓をどの位置に設け、どれくらいの大きさがベストなのかをシミュレーションしている感じです。
僅かに空いている家と家の隙間から、ピンポイントで窓を設けたい時に、的確な設計が出来ます。
下図は、山奥のこれから建てるQ1.0住宅で、太陽光を載せるので、山の影にならないか、実際に朝から現地にいって2時間くらい影の調査をし、山の高さなどを家で見立てて作成したシミュレーションです。
隣の家に当たる光も参考にしながら、9:00では1階に陽が入らない事も分かったし、太陽光は発電してくれるという事が分かりました。
10:00になると、影の位置も大体合っているので、これで住まい手の方も、山の影に怯えないで済むという感じです(笑)
間取りが大体決まったら、窓の位置や大きさも適切かをお客様にも見て見らう為に、使うソフトでもあります。
窓からの日射がしっかりとれているか、日射による1日の熱量を自分で把握します。
この時、室内の明るさも照明OFFでどれくらいあるかをお客様にも見て見らいます。
団らん時にリビングは問題ないかなど・・・。
窓の位置、大きさ・種類が適切に設計できると、真冬の寒い時でも無暖房でも20℃くらいの室温になる設計が出来ます。下図は宇都宮市です。
小山市ですと、マイナス8.2℃になるので、2℃くらい下がりますね。
ちなみにこれで、
Q値1.19
UA値0.32
です。
窓はあえて樹脂窓使ってます。
ホームズ君の素晴らしい所は、UA値とQ値がリアルタイムで表示される所です。
部分リフォームにも対応しています。
下記Q*(キュースター)もリアルタイム表示が素晴らしい。
そして、中間期以外で冷暖房を24時間つけっぱでも、2万円以下で抑える事を目標としていますので、それをお客様にも見てもらいます。
これらのプロセスを踏んで、お客様には自信をもって、提案します。
これ以外の設計はないという所まで、自分自身であらゆる可能性を潰していきます。
冷暖房費や室温変動シミュレーションによって、そこまでお金を掛けなくても快適だろうという範囲を模索します。
こんな感じになれば、UA値もQ値も、まったく気にしていません(笑)
窓も木製サッシを使えばもっともっと室温も光熱費もよくなるのですが、今の時代は、まだまだ高額で、誰もが使えるわけではないので、お客様の予算内で最高の提案が出来るのか、ある程度判断出来るようになりますよね。
さすがに坪単価50万とかの方で、ここまでの性能は出せないと思いますが・・・(;´∀`) - ④QPEX
- これは、僕が所属している新住協で、開発などをしているソフトになります。
これも、部類としては、ホームズ君同様、省エネ計算ソフトになります。
燃費と言う事で、電気や灯油の消費量が計算できます。
ホームズ君と違う所は専門的な所で多々あるのですが、こちらは室温が分かりません。
しかし、「自然温度差」というのはQPEXでしか出せません。
QPEXを使う一番の理由は、「エネルギー消費」をしっかり考えられるからですね。
まあ、ホームズ君の方で、冷暖房費が少なくなれば、QPEXでやってもエネルギー削減にはなりますが、何パーセントくらいという数値では分からないので、そこはQPEXに軍配が上がる。
施主様向けプレゼンシートは下記な感じです。
下記は、新住協のマスター会員登録申請した物件のデータです。
Q値、UA値、断熱材の大まかな仕様、自然温度差、冷暖房負荷、Q1.0住宅のレベル判定、燃費が分かります。
下図は上記プレゼンシートの部分拡大したものです。
UA値は0.36ですが、Q値が良い為、次世代省エネ基準の約85%OFFの暖房エネルギーで済んでいます。
実はこのQPEX、どちらかというと、実務者向けな感じがしています。
つまり、実務者が使う事によって、「省エネ住宅とはどんな事に留意するのか?」という事が分かります。
ホームズ君と併せて使う事により、計算間違いなども発見できる所がメリットでもあります。
あと、QPEXの場合、色んな窓メーカーのU値が「計算値」として実際のU値がボタン一つで自動算出できる所が魅力です。
下記はQPEXで最も面倒な、窓のサイズや庇と窓の高さの入力です。
設計者として自分の設計している家の性能を理解しなくてはいけないものがQPEXでは分かる。
それが下記です。
青線は、暖房の働きを助ける為の力量みたいなものです。
特に日射取得熱が貧弱ですと、暖房がかなり頑張らないと、ダメと言う家という事です。
まず、QA(総熱損失係数)が重要である。
これは、1℃に必要な熱量を示します。
QAが分かると、↓の様な問題が解けるようになります。
QAについて詳しくは↓を参照してください。
このような感じで、ホームズ君も、QPEXも、何か実際の物件がある時に使うのではなく、「ゲーム感覚」というか、「遊び感覚」で使うと、とても楽しく使えると思いますよ。
QPEXも、どんな窓を使うと、燃費はどう変わるのかなど、あくまでも『設計』という視点で使用するソフトだという事です。
UA値やQ値を知る為に使うソフトではありません。
- ⑤エネルギーパス
- 私はエネルギーエージェントとして登録されています。
通称エネパスは、世界基準の「ものさし」で家の燃費を表示できます。
最近、ホームズ君と連携出来るようになったので、入力が楽になりました。
設定で、35年間などの太陽光搭載と非搭載の場合の光熱費のシミュレーションが出来ます。
しかしながら、実際の住まい方を入力しての光熱費シミュレーションなので、実際よりも大きく出過ぎています。
でも、これが「ものさし」というもので、この家はこれだけの「燃費」という基準となるのです。
ものさしというのは、住まい方や誰かの主観で変わったら、基準がブレブレですよね(笑)
車で言えば、ドリフトしながら運転しているような人と、そうでない人では、同じ車に乗っても燃費は全く変わりますし、毎日高速道路を運転する人と、近場での通勤メインの人では、後者の方が燃費は悪くなります。
しかし、燃費は悪いけど、距離を乗らないから1か月に給油する回数は少ないはずです。
下記はQ1.0住宅レベル3の家です。
エネパスでの資料の一部ですが、省エネ基準の家と比べて、圧倒的に少ない半分以下のエネルギーでOKなのは変わりありませんね。
エネパスでやるとQ値が0.65とよくなりすぎるな~。 - ⑥ホームズ君(構造計算)
- 省エネの次は、一番難易度が高いというか、詳細な計算方法になる「許容応力度計算」を行います。
それにより、耐震等級3かどうかの確認をします。 - ⑦wallstat(ウォールスタット)
- 木造軸組構法住宅を対象とする倒壊の解析をするソフトウェアです。
下図は耐震等級3の住宅です。
大地震(熊本地震)を発生させてみます。
この角度では下図で赤矢印の部分が壊れていますが、耐震等級3の為、全壊もしませんし半壊もしません。
それが、構造計算をせず、てきとうな設計をすると・・・
↓倒壊(全壊)します。
こういったシミュレーションが出来るのって、すごい事ですよね。 - ⑧ARCHITREND ZERO
- これは、人を1人雇いたくなった時に導入すべき、車が1台買えるくらいの値段のソフトです。
平面詳細図や矩計図などを、「自動で!」やってくれます。
当然、自動の結果になるように、詳細な入力が必要なわけですが、これが面倒・出来ないって会社は、導入するだけお金の無駄になります。
こういった図面が一瞬で出来るので、今まで10日かけて造っていた図面は3日で終わるくらいに、劇的な人工削減となりました。 - ⑨DRA-CAD
- 基本的にこのDRA-CADは、図面を線一本一本描いていくためのソフトです。
就職してから使っているので、約14年使い続けているソフトです。
このCADの凄い所は、文字の一括変換と、手足の様に操作できるような所です。
例えば図面100枚あったとして、図面名称が変ったとします。
これが一瞬で行えますし、数字の自動計算などもしてくれます。
キーボードに、色んなコマンドを設定できるので、とにかく、画面を見たまま、手で描いているような感じで図面が描けます。
といっても、手で描くより断然早いのは当たり前の事実ですけどね(笑)
このDRA-CADは、「仕上」として使用しています。
図面の着色だったり、部分詳細図をより細かく描いたりと、
ようは、現場に見易いように、また、伝えやすいように仕上げる為に、使用する感じですね。
↓特に展開図でDRA-CADが必要です。
壁など、テクスチャが貼れるので、お客様でも分かりやすいですよね。 - ⑩見積もりソフト(あっと簡単見積もり)
- これは、ホームズ君シリーズの、見積もりソフトです。
特に多くを語る必要がないくらい「便利」って事です(笑)
- まとめ
はい、こんな感じです。
家一軒設計するのに、色んな事やってます(笑)
でも、これらはラファエル設計にとっては普通です。
基本的に、家の設計って、お客様にとっては「計画段階」が最も重要であり、
「実施設計」になったら、現場側にとって重要な図面でもあります。
細かい部分だけがお客様にとって重要な所ですよね。
1つのソフトで全部が出来ればそれはそれで楽なのですが・・・
それは不可能に近い。(笑)
それぞれ、ソフト製作者がどのような使い方をして欲しいか、その思いが強いソフトメーカーほど、アップデートを重ねて、魅力的なものになっていく。
特に省エネソフトに関して言えば、単純な外皮を求めるだけならエクセルでの計算式でも出来る話だ(笑)
設計者としての役目は、全く持ってそれではない。
ソフトを使わなければ、手計算でなんてやってられない(笑)
改めていうけど、「省エネ計算」=「外皮計算」ではないですからね。
「省エネ」というのは一次エネルギーの入力をして「燃費」というものが出てくるが、今の国のプログラムは、どれだけ省エネ設計をしても、家の面積がデカければ年間30万とか40万とかになる(笑)
かなりいい加減ですよね(笑)
吹抜けでつながっていれば、主要な居室がかなり大きな面積になってしまい、それにともなって、エネルギー使用量も大きくなる感じ。
ここは、もっと現実に近付けたロジックにしてもらいたいな~
次は、あくまでも僕が調査した内容での話になるが・・・
- 事例1 UA0.36 Q1.34(Q1.0住宅ではない付加断熱)
夫婦2人
子ども1人(小学生)
の3人家族で・・・
パパは夜帰宅
ママは基本在宅
子どもは夕方前に帰宅
という生活スタイルで、空気清浄機を使わない&冬に加湿器を使わない場合で、中間期の月の電気代は大体8,000円台。
1年間だと96,000円となる。
これに冷暖房費が加われば、その家庭の年間電気代になるわけだ。
1月、2月の電気代が15,000円くらいの家庭は1年間の合計は約14万前後となるはず。
そうすると、年間の冷暖房費は約4万円前後ということだ。
- 事例2 UA0.46 Q1.75(Q1.0住宅ではない付加断熱)
夫婦2人
子ども2人(幼稚園以下)
の4人家族で・・・
パパは夜帰宅
ママはたまに在宅でほぼパート
子どもは夕方まで保育園
という生活スタイルで、空気清浄機を使わない&冬に加湿器を使う場合で、中間期の月の電気代は大体6,000円台。
1年間だと72,000円となる。
1月、2月の電気代が15,000円くらいの家庭は1年間の合計は約12~15万前後となるはず。
やはりQ値が1.7でUA値が0.5に近いと、住まい方で冷暖房費が大きく幅が出てくる。
ホームズ君では間歇運転で冷暖房費7.8万円と出る。
実際に1年住んだデータでは、エアコンを我慢はせず、5.8万円くらいで納まっているようだ。
つまり、年間の電気代は13万円で済んでいる。
- 冷暖房費シミュレーションについて
ホームズ君やQPEXではここの部分が算出できる。
4万円くらいかかる家は、冬の暖房エネルギーが多いので、Ua値がheat20のG2グレードを超えていても、
Q1.0住宅のエネルギー削減率には至らない。
実際に、1年間住んだ家の電気代と、ホームズ君での冷暖房費も併せたシミュレーションをした結果、一番近いお宅は117円の差だった。
つまり、UA値よりも、Q値が低い程、Q値を参考にした方が、ホームズ君の冷暖房費シミュレーションは結構精度が高いと思われる。
事例2のケースでは、実際と2万円もの差が出ているが、シミュレーションよりも高くはなっていない。
現在は、Q1.0住宅以外造るつもりはない。
こんな感じで、何となく自分の中でのデータがあると、ホームズ君だけで、省エネに関する大体の予想は付けられるようになる。
もっと言えば、方位の角度によって、窓に何時間くらい日射があるかな~って感じで、無暖房での室温も予想がつくようになる。
ただ、エネルギーパスに関しては、「世界のものさし」なので、誰かの主観とかで決まる訳ではないのですよね。
まあ、お客様にとって「シミュレーション」という話から言えば、実際に掛かる光熱費と近い方が嬉しいと思います(笑)
ソフトは、使いこなしてこそ、使う意味があると思っています。
そういった意味では、構造計算系の部分は、まだ勉強が必要だけど、今年はすべてマスターできるように頑張りたいと思っています。
使い過ぎじゃないの?って思うかもしれませんが、使用割合(長い期間使う)で大きいのは・・・
- マイホームデザイナーpro9EX
- ホームズ君(省エネ)
- DRA-CAD
って感じですね。
他は使っても1~3日間くらいです。
しかしながら、素晴らしい活躍をしてくれています。
どのソフトを使うのか?という考えに関しては、どう考えてもホームズ君は外せないソフトである事は間違いないと思っています。
何より、ソフト開発に携わる方々の意識の高さと、サポートが素晴らしい。
ARCHITREND ZEROは福井コンピュータですが、営業の方々もとても良い方ばかりですし、サポートの人達もこれまた素晴らしい!
なので、両者とも、「保守サービス」に加入しないと、操作がわからず、段々手つかずになり、ソフト買って終わりのパターンとなるだろう(笑)
とにかく、しつこいようだが、ソフトは楽しく使い続けながらじゃないと、覚えられないし、忘れてしまうものです。
ホームズ君なんて特にそうですが、やり込んでいくと、「ああ~ここでこういった操作が出来るといいのにな~」ってのが出てくる(笑)
そういった実務レベルでの要求が増えてくると、そのソフトも使いやすさが増していくのだと思う。