ドイツ省エネ住宅事情

昨日に引き続き・・・
建築技術者を対象とした住宅・建築物の省エネを学ぶeラーニング講座
“eri-college”
でWeb講義を視聴しました!

では、レポート行ってみましょう!
タイトル
「ドイツ省エネ住宅事情」

 

まず、こちらの表を見てみましょう。

  ドイツ 日本
面積 357,000k㎡ 378,000k㎡
人口 8200万人 1億2600万人
人口密度 229人/k㎡ 337人/k㎡
GDP(PPP) 36801ドル 33805ドル
建設費用(1戸建て)
1€=120円
約13万~19万円/㎡ 約12万~24万円/㎡
家賃(70㎡) 約800円/㎡ 約1800円/㎡
住宅戸数 4000万戸 5800万戸
新築率 0.6% 1.5%
空家率 8.6%(西ドイツ側は3.4%) 13.5%
一戸建て割合 30% 56%
集合住宅割合 50% 43%
一戸建て平均面積 153㎡ 125㎡
住居面積 43㎡/人 36㎡/人
木造割合(一戸建て) 15% 93%

日本家賃高けぇぇ・・・という感想がまず思いましたが・・・(笑)
日本で問題になっている空家率も違いますね!

大きな違いは新築率で、ドイツはリフォームが多いようです。
新築にお金が使われるのは1/4、リフォームは3/4という感じのようです。

次に、木造の割合が違いますね。
ただ、近年ドイツの方でも木造住宅が注目されてきているようです。
高断熱住宅を求めた場合、コンクリートとか石よりも木造の方が暖かいですからね。
また、再開可能エネルギーという観点からも注目されているようです。

そして次に、面白いデータがありました!
ドイツでは、日本でいう『ハウスメーカーやビルダー(工務店)』で建てる人の割合が1割(10%)しかいないという事!!
では残りの9割(90%)の人達はどうしているのかというと・・・

設計事務所(設計士)に依頼する

だそうです!!

ドイツの方々は、少しでも建築費を安くするために25%の人達がお施主様が床や壁を自分でやるみたいです。
理由はDIY文化が大きいようで、自分で手を加えたりすることで愛着がわくという事もあるようですね。

ドイツは、リフォーム中心になっておるので、新築に対してのビジネスが非常に厳しいようですね・・・
(;´▽`A``
戦前に建てられたものが価値が高いようで・・・
リフォームをしたものほど価値が高いという法整備になっているようで、リフォームをする人たちが多いという事もあるようです。
なので・・・
ドイツの小規模工務店の一部では、リフォーム社会へのシフトに向けてどうした対応をしているかというと、

  • パネルメーカへと転身し、建物の種類を問わず、手離れのいいパネルの供給に重点を置く。

という感じになっているようですね。
日本みたいに建てた後も付き合っていくような感じはないんですかね・・・。

木質パネルというのは、電気とか断熱材とかをすでに取付けて、現場ではそれを組み立てていくだけで家が完成するみたいな感じです。

外皮の平均U値(ヒートブリッジ含む)が近年では0.2~0.3くらいの間を推移しているようです。

 

次にドイツの実際の住宅事例をお話しすると、工法的には枠組み工法が非常に増えているらしいですが・・・
Raphael設計でのおすすめしている
セルロースファイバーや、ダブル断熱を採用しているようです。

基礎に関しては、基礎の外側断熱、べた基礎のスラブ下に断熱を施しているようですね。

 

日本でも断熱の講習会に参加したりして、注意して学ぶ所でもあるのですが、断熱・気密している部分を配管などで貫通する時にどういった処置をするのかという所で、しっかりやっていればコストはUPするし、手を抜く、あるいは知らないでちゃんとした処置をしなければコストUPにはならず、そして断熱の欠損となってしまうのですが、しっかりやってる事が当たり前ではございません!
そういった所がきちんと出来るか出来ないか・・・
逆に監理できるかという所が非常に重要なのです。
こちらでも記載しました。→(気密シート・テープ

ドイツでもしっかりやっているようですが、ゴムのパーツをはめ込んで、気密テープを貼って、断熱欠損を防いでいるものが一般的なやり方のようですね。

 


 

次に、蓄熱(熱容量)のお話です。
熱容量に関してはこちらで解説しています→(熱容量
まあ、簡単に言うと、『熱をどれだけ保てるか』です。
木造は暖かいイメージがありますが、熱容量は小さいので、すぐ暖かくなって、すぐ冷えます。
ドイツでの事例で、そんな欠点を補おうと、石膏ボードの表面に古いレンガなどを積み上げて、レンガに熱を蓄熱させるという面白い手法を取っているようですね。

石焼きなどを想像していただくと分かりやすいと思いますが、ずっと暖かいですよね?

石やレンガなどに蓄熱させる事が出来れば、熱移動によって、人体の熱が壁に吸い取られなくなるって事です!
お洒落ですし、木造でも熱容量を高めようとして良いアイディアですよね♪

ただ、しっかりした施工をしないと地震の時の落下が心配ですけどね・・・。


 

次に開口部の性能
ですが、トリプルの断熱三層サッシも多いようですね。
樹脂も安いようですね。安いおかげもあってか国内割合58%くらいありますね。
木のサッシも好まれていて、国内割合8%の人が選定しているようです。

ただ、木は特に外側の劣化が凄まじいので、劣化しないようにする塗料なんかもあるようですが、非常に人体によくないのでアルミのカバー(断熱材付)を取り付けて対応しているようですね。

日本では外側アルミ、内側樹脂、Low-e複層ガラスの断熱窓が主流でしょうか?
まあ、断熱性能を上げようと思えば、同じように三層(トリプル)にするとか、外も内も樹脂を選ぶべきだと思います。
ただ、予算にもよりますけどね・・・
(;´▽`A``


 

次に玄関ドアの性能
ですが、

  • Ud0.5~1.8
  • 気密性
  • 防犯性
  • デザイン性

を重視して、今までは15万円くらいの安いものをみんな選定していたけれど、今では40万とか50万、100万円とかするものを選定する人が増えているようです。


 

次に遮熱
に関してですが、
日本でも非常に有効である、
『外付けブラインド』
が非常に多くなっているようです。

窓の内側がカーテンなども含めて普通と思うかもしれませんが、そうではなく、窓の外側に付けるものが外付けブラインドです。

夏は非常に有効で9割くらいの熱をカットしてくれて遮熱性能を発揮してくれるのですね。
ちなみに、室内側にブラインドだと、2割程度しかカット出来ないという・・・
外付けブラインド圧勝なわけです。

太陽の赤外線というのは、室内側にブラインドがある場合、窓ガラスを透過して室内にも入ってきてしまいます。

そうすると、ブラインドが徐々に熱されて熱くなるわけです。
そして、電気ストーブ状態のブラインドになってしまうわけです。
日が陰ったとしても、ブラインドから熱が発せられるわけですから、遮熱の効果があまり高くないという事になるわけです。

というわけで、外付けブラインドを付けられる人がドイツだと非常に多いようです。
ちなみにスライドタイプのものもあるようです。
シャッターを使う場合もあるようですが、シャッターケースにも断熱が考えられているものを選ばないと熱損失になるので注意ですね。
日本でも主流になってくれればいいのにと思います・・・。


 

次に換気
に関してですが、最近の省エネ住宅では標準装備として『熱交換器』のついた換気設備の『全館集中換気』が主流のようです。

冬に暖めた空気を逃がさないという点と、夏に熱い空気が入ってこないようにするのが最大のメリットですよね。
日本でいうと『第一種換気』というわけです。
給気も排気も『機械』で行うものです。
デメリットとしては、コストが非常に高いのと、断熱の方法、設計が悪いと場合によっては内部結露を起こして、換気が全くされない、カビが発生などという事も起きます。

日本では圧倒的なコストの安さと手軽さ、ほぼメンテナンスフリーである、
『自然換気』(第三種換気)
がまだまだ多いようにも思います。
給気は自然で排気が機械のものを指します。

ただ、これって、花粉症の人からすると最悪ですし、冬なんて、冷気が入ってくるから給気口を閉めちゃうんですよね(笑)

よく勘違いしているというか、知らない人多いですが、給気されないと、排気になりません(笑)
給気口を閉じて、窓も閉めた状態で換気扇を回したりすると、部屋の中は『負圧』になり、分かりやすく言うと、真空パック状態になりそうな状態になるわけです(笑)

基本的に、換気は第一種を取り入れるのが最高ですが、どうしても予算が追い付かない場合は第三種でも法律的には問題ありません。


 

次に温熱の供給
関してですが、
大抵ヒートポンプを使って『冷暖房』『給湯』を行っているようです。

床暖房を通して冬は暖かい温水を、夏は冷たい水を流して冷房をするという方法が主流のようです。
そして、大体の家庭で『太陽熱の給湯』と組み合わせてるようです。

物によっては換気設備とヒートポンプとも組み合わせて、室内に入ってくる空気を暖めたりして冷たくして冷暖房にしているものも増えてきているようです。

この講義でも話していますが、ドイツでは断熱性能の高い住宅(省エネレベルの高い)では、床暖房は『大袈裟過ぎる』と考えられているようですよ(笑)
それだったら換気設備をうまく使えばいいという考えのようですね。

省エネ・断熱設計(Q&A)
『床暖房って必要?』←クリックでページジャンプ
でも取り上げていますが、

キチンとした断熱設計を行えば、床暖房の絶対的な必要性は感じられません。
と私は思っています。

 

ちょっと話戻ってヒートポンプですが、一番?性能が高いものとして『地中熱の熱交換型』があり、これで冷暖房をするという方法も採用しているようですね。
ただ、夏も冬も両方回していないとダメなのです。
冬だけ回して・・・とかだと3~4年目で暖房が利かなくなります。

その理由ですが・・・

例えば冬だけ稼働させていると地中の熱が奪い取られて、地中の温度が下がってしまうのです。
熱移動です。(昔の家は何で寒いの?)で熱移動を説明しています。

なので、夏の暑い時期にも冷房する事によって、キチンと熱を地中に還してあげる事で本来の熱交換が出来るようになるわけです。


 

感想
一番この講義を聞いて嬉しかった事は・・・
ドイツの方々は『設計事務所に依頼する事が多い
ということです(笑)

まあ、これまでこのホームページでもブログでも断熱に対して色々記載してきましたが、国は違えど、環境工学に関する断熱・気密などの設計、考えは同じようなポイントが重要なんだなと思いました。

結局・・・
断熱に関して
気密に関して
結露に関して
換気に関して
など、
正しい知識と施工をしないと方向性は省エネでも省エネになっていないという事です。

日本でもこれらのような正しい地域が浸透しない限り、キチンとした設計・施工している人たちが『大袈裟な設計・施工』と思われるのが非常に残念に思っています。
コストが上がってしまうので、気密に対する施工を省こうとする工務店もいますが、それは絶対ダメな事なのだという事をこれから家を建てる人達も多く認識して欲しいなという思いです。
2017年01月09日