ウレタンが理想的だと!?見極めポイント①
理想的な断熱材がウレタンだと!?そんなバカな!
僕からすれば、それはありえない。
本屋さんに立ち寄った際、建築雑誌コーナーにこんな雑誌が置いてありました。
「建てた人に聞く、家づくりの本音。すみごこち」
「へ~~」と思い、ちょっと立ち読み。
結論を申し上げるとFPの家で建てている家ばかりで、所々、「FPの家」という文字が出てくるので、FPの家が監修的な構成なのだろう。
住み心地というのは、住まい手の体系・作業状態などによっても、「快適性」という意味で言えば、感想は異なってくるものだ。
なので、こういった雑誌全般に言える事だが・・・
どんな断熱材を使って、その厚さが何mmなのか?
窓はどのメーカーのどんなものを使っているのか?
UA値、Q値はいくつなのか?
外と室内の、自然温度差は何℃なのか?
そんな情報は全く書かれていない。
まあ、そんな中で、読み進めて行くと、「はあ?」という内容が出てきた。
『経年劣化しない建物の見極めポイント』
という事で、見極めポイント1として、
長期的に劣化しにくい、「バランスに優れた断熱素材」を採用しているのか?
という見出しがあり、最初のポイントは言うまでもなく「適切な断熱材選び」で断熱材選びに失敗しないよう基礎知識を頭に入れよう!と書いてある。
結論は、「硬質ウレタンフォームは理想的な断熱素材と言えるだろう」と締めくくっているのだが、これには賛同できないです。
理由は、「燃える」から。
他にも理由も含めて色々突っ込みたい所はありますが、とりあえず・・・
そこに至る過程を、本に書かれている文章では分かりにくいと思うので、本に書かれている文言そのまま使用して、僕なりにまとめてみますね。
- グラスウール(繊維系断熱材)
- 【長所】
断熱性、難燃性、防音性に充分対応している
【短所】
- 隙間なく施工するのが難しい
- 施工後に自重や度重なる地震等により少しずつずり落ちてしまう点で性能が劣化するリスクが高い
- ポリスチレンフォーム
- 【長所】
防水性、耐久性に富み、外貼り断熱として多用される
【短所】
熱に弱く、脆い - セルロースファイバー
- 【長所】
無記載
【短所】
作業工程に手間がかかり、やはり隙間が出来やすい - 硬質ウレタンフォーム
- 【長所】
って感じで、ウレタンごり押しなのですが・・・
そもそも、この熱伝導率だけに着目した内容での議論は全く意味がないし、上記内容は洗脳レベルの話ですよ。
厚みの表では、何故ウレタンだけ厚み105mmで、他は100mmとか50mmなんだよ(笑)
熱伝導率が一番低いウレタンだけ厚み一番大きくしたら、他より圧倒的に熱抵抗良くなるのは当たり前だろ(笑)
そして、そもそも、普通のグラスウールなんて今時使わないから(笑)
高性能グラスウールで16kg(16K)なら「熱伝導率0.038」辺りを使います。
仮に、厚みを同じにしても、ウレタンが一番抵抗力は強くなるのだが、
熱が損失・伝導する部分は、床・壁・天井(屋根)・窓・換気です。
充填断熱の場合は、断熱材の厚みをいくら厚くしても、断熱材が入らない部分が出てきます。
それが柱の部分です。
そういった所をヒートブリッジ(熱橋)といいます。
それを防ぐ為に、ラファエル設計では「付加断熱」をします。
断熱材の厚み勝負で言ったらウレタンにグラスウールは勝てないですけど、例えば外壁であれば・・・
構造用合板9mm+断熱材+石膏ボード12.5mm
という構成になり、
断熱材の部分が・・・
ウレタンならU値は0.32
付加断熱の高性能グラスウールならU値は0.2と、圧倒的に勝ちます。
外壁だけ高性能グラスウールのQ1.0住宅仕様から、付加断熱ではなく、雑誌がごり押しのウレタンに変えて見ます。
そうすると・・・
- 高性能グラスウール105+105mm付加断熱
- Q値:1.19
UA値:0.32 - ウレタン
- Q値:1.33
UA値:0.37
断熱材では圧倒的に勝っていたウレタンのはずなのに、Q値もUA値も、グラスウール付加断熱のQ1.0住宅に負けましたね。
再度確認ですが、外壁以外、窓や天井、基礎の断熱、換気など、全て同じ条件での比較です。
それを、室温変動で見て見ましょう。
一応言って行きますが、Q1.0住宅仕様がベースで、外壁だけ変えたものです。
ベースが、しっかり日射取得を考えたQ1.0住宅なので、両者とも外気温マイナス8.2℃でも無暖房で驚異的な室温です(笑)
- 高性能グラスウール105+105mm付加断熱(1階)
Q値:1.19
UA値:0.32
- ウレタン105mm充填(1階)
Q値:1.33
UA値:0.37
- 高性能グラスウール105+105mm付加断熱(2階)
Q値:1.19
UA値:0.32
- ウレタン105mm充填(2階)
Q値:1.33
UA値:0.37
ウレタンの方が2℃も低いですね。
たかが2℃だと思うなかれ!
27℃の室温と25℃の室温、夏をイメージしてもらえば、どちらが汗ばむか想像出来ると思います。
Ua値が0.7~0.6あたりの家ですと、1℃室温上げるのに必要な家の性能のコストUPは、大体100万円です。
断熱材の熱伝導率だけ見れば、ウレタンはかなり熱抵抗が高いですが、家というのは、損失する部分が沢山点在します。
さっきの比較は、あくまでも外壁だけを変えたらそうなるかという比較で、
UAもQ値もどちらもいい同士の比較なので、ちょと実際に基礎とか天井とかウレタンで、UA0.5くらいの家を、モデル化してみます。※ベースはQ1.0住宅ではありません。
ウレタンでUA0.5辺りですと、次世代省エネ基準より、高性能という事で宣伝している会社もあります。
では、無暖房での比較を見て見ましょう!
外気温はすべてマイナス8.2℃です。
- 高性能グラスウール105+105mm付加断熱(1階)
Q値:1.19
UA値:0.32
- ウレタン105mm充填(1階)
Q値:1.64
UA値:0.50
- 高性能グラスウール105+105mm付加断熱(2階)
Q値:1.19
UA値:0.32
- ウレタン105mm充填(2階)
Q値:1.64
UA値:0.50
はい、今度は結構な差が出ましたね。
真っ青な方が、雑誌では「理想的な断熱材」として「見極めポイント1」だと言っているのです。
これで見てもらうと理解出来たと思いますが、断熱材なんて、断熱材だけに着目して、熱伝導が低いだの熱抵抗が高いだの話していても意味がないのです。
もう一度、長所・短所を見てみましょう!
今度はそれぞれ、私の見解を「赤字」で入れて行きます。
- グラスウール(繊維系断熱材)
- 【長所】
断熱性、難燃性、防音性に充分対応している
ラファエル設計は新住協のマスター会員として、高性能グラスウールを使います。
【短所】
- 隙間なく施工するのが難しい
- 施工後に自重や度重なる地震等により少しずつずり落ちてしまう点で性能が劣化するリスクが高い
これはその通りです。
グラスウールには、裸のグラスウールと気密フィルム付のグラスウールがあります。
【裸のグラスウール】※黄色の部分が気密シート0.2mm
【フィルム付グラスウール】※気密フィルム0.1mm
ラファエル設計をはじめ、グラスウールで高性能な家を造っている人たちは、共通点があります。
それは・・・
フィルム付グラスウールは絶対に使わないという事。
フィルム付のやつは、元から気密シートが付いているので、施工が楽と思われがちですが、これがまた施工の難易度をあげます。
掛け布団のカバーと中綿とかの部分を紐で結んでいないと、中綿部分だけズレますよね?(笑)
そんなイメージなのですが、ラファエル設計の現場でも、浴室周りにだけ、断熱・防音なども含めてこのフィルム付を使用したことがあります。
が!!上部だけ少し沈んでしまっている写真が↓です。
グラスウールは黄色なのですが、梁から5cmくらい下がっているのです。
監理していて気が付いたので、直してもらいました。
なので、しっかりと施工状況がわかる裸のグラスウールを使用して、腕の良い大工さんがしっかりとやれば、グラスウールがダメと言う理由には全くなりません。
- ポリスチレンフォーム
- 【長所】
防水性、耐久性に富み、外貼り断熱として多用される
【短所】
熱に弱く、脆い
これは、落雷火災の際、やっぱり危ないです。
よって、ラファエル設計では外壁、屋根には使用しません。 - セルロースファイバー
- 【長所】
無記載
何故長所を語ってやらない!?(笑)
セルロースファイバーも、基本は火事に強いですよ。
金額があえば、基本的にはセルロースを使いたいです。
隙間なく充填出来ますので。
【短所】
作業工程に手間がかかり、やはり隙間が出来やすい
おいおい・・・
手間がかかるって・・・?
そんな事ないでしょ!
それは全然短所でも何でもないからね。
隙間が出来やすい?
きちんと60K(60kg)くらい入っていれば、パンパンですからね。
45Kとかにケチってしまうと、自重で自沈します。
そんな事も知らずに、欠点だとか言う人が実際にいます。 - 硬質ウレタンフォーム
- 【長所】
- 性能数値に優れるのは勿論
- 他の断熱材に較べて致命的な欠点が見当たらない比較的バランスの取れた素材といえよう
え!?
燃えまくるのがウレタンですよね?
致命的だと思うのですが・・・。 - 断熱性能(熱伝導率の値)は他を圧倒している
- 断熱材の厚みと断熱力との相関ではグラスウールよりも有利さっきの室温変動、省エネ計算結果からそういう見解述べてくれる?
てゆーか、ウレタンの「短所」については一切触れずかい!!?(笑)
では、僕が触れましょう。
ウレタンは、グラスウールに比べて燃えます。
ウレタンは250℃まで発火しないとか書いてあったりしますが・・・
火事というのは、250℃ではなく、700℃以上になるわけですよ。
ウレタンの燃える「自社実験」というのは、どういった実験したのかまで書いていない。
最近のウレタンの事故・ニュース、知ってますよね?
ロンドン火災とかもそうですけど。
「燃えないウレタン」なんて、この世に存在しません。
はい、まあこんな感じです。
この見極めポイントというのは、「バランスに優れた断熱素材を採用しているか?」がポイントですよね。
断熱性能も、火災についても、長期的に劣化しにくいという点でも・・・
ラファエル設計が行う家づくりでは、グラスウールかセルロースファイバーを充填断熱に使います。
理由は、これまで述べられてきた「短所」は、いい加減な施工ありきの「短所」ですもん。
ウレタンが施工性が楽というならば、それは施工者によってのメリットであって、住まい手にとっては関係ないです。
手間が掛かればその人工分は、お客様に負担となるかもしれませんが、ラファエル設計の場合、そこまで大きな施工手間代を取っていません。
ラファエル設計の所属する新住協では、数年経過後のグラスウール劣化検証というのもの行っており、全く問題ないという検証結果も出ています。
長期的に劣化しやすいかし難いかというのは、「施工がしっかり出来ているか?」という所が正直一番大きい所ですよ。
ウレタンは、「他の断熱材に較べて致命的な欠点が見当たらない比較的バランスの取れた素材といえよう」って、明らかにおかしな情報操作ですよ(笑)
落雷火災が起きた時には、もの凄く危険です。
外貼り断熱での短所に、熱に弱く脆いと言っていますが、火事レベルになったら、ウレタンだって同じような短所だと思いますけどね。
いずれにしても、ここらへんの話は、正直「水掛け論」的に発展していきます。
ちょっとまとめますが・・・
ウレタンを使った断熱工法を、ラファエル設計は「危険」と思うから、絶対にやらないですけど、ウレタンを肯定している人たちを否定したいわけではありません。
ウレタンを使った断熱工法で家を建てたい人は、ご自由に建てればいいと思いますよ。
家づくりの工法については、その人たちが考える「視点」からメリット・デメリットの話が生まれます。
ウレタンだって、火事が起きなきゃ、全然いいわけですよ。
耐震等級3だって、加速度の大きい地震が起きないと思う人は、別に建てなきゃいい話です。
ラファエル設計は、「家づくり」という行為を色んな角度から見た時に、現時点で考えられるベストな方法を、選定していきます。
地震が起きる確率とか、火事が起きる確率を考えていても、ハッキリいって時間の無駄なわけです。
「どんな状況であっても、住まい手にとって、快適で安心できる家」というのを提供したいと考えています。
確率論で家を提供して、例えば1%の確率で起こるかもしれない問題が起きてしまった時、それを自然現象のせいとかに、皆さんはするんですかね?
僕はそんな事はしないです。
地震にしても、落雷火災にして、起きるかもしれないという「予想」が出来るものなのですから。
それに対して何の対策もアプローチもしない方が、僕からしたら信じられない行為です。
今回、ウレタンを使用した家と、グラスウールで建てた家の室温変動を、わざわざ作って説明しました(笑)
UA値とQ値も出しました。
これが、ラファエル設計の考える家づくりの「根拠」の1つです。
断熱材を選定する上での「根拠」の1つです。
ウレタンが理想的な断熱材でも、工法によってはグラスウールだって、その理想的なウレタンを圧倒する室温を高める事が出来る。
僕は、しっかりと「根拠」を示しての説明をさせていただきました。
単に、ウレタンがいいとか、グラスウールが良いという「イメージ」での話は避けました。
結局ね、断熱材は、熱伝導率と熱抵抗だけ見て、その断熱材が理想的なんていう事が間違っていると僕は思うのです。
熱伝導率と熱抵抗が劣っている欠点だとするならば、長所や、欠点を伸ばしてやる工法で家を造ってあげればいいのです。
何の断熱材を選んだ方がいいか?というのは、正直・・・
素人である一般ユーザーが考えるものではありませんよ。
何の断熱材がいいと思う?かは、プロ側が選ぶものです。
そのプロが提供する断熱材が良いかどうかは、一般ユーザーが決めるものなのですが、正直、それが良いかどうかなんて、分からないと思いますよ。
ラファエル設計が示すような室温変動なども見せてもらいながら提案されれば、判断も付けやすいとは思いますけどね。
極論言えば・・・
無暖房でも、寝室などの室温は20℃とかあれば、住まい手はどんな断熱材使おうがいいわけです。
コスト的にも同じくらいなら、住まい手はどんな断熱材だろうがいいわけです。
そうなると、後は火事の時に燃えやすいとか、経年劣化で断熱材がどうなるのか?
という議論になります。
これも、経年劣化の部分は、大工さんの腕によるものも出てきます。
なので、ブローイングでグラスウールとかセルロースファイバーを、自沈しないように充填すれば簡単な話なんですけどね(笑)
いずれにしても、ネットや雑誌含めて、家の性能自体がまるで掲載されていない。
これは、そういった計算自体をしていない可能性も高い。
今の日本の家づくりなんて、それくらいずさんです。
下記の雑誌には、QPEXというソフトで計算した結果が、きちんと全て表記されています。
余談ですが・・・初めていくレストランに、下記のメニューがあった場合、どう思いますか?
「濃厚ミートソース」
「じっくり煮込んだミートソース」
僕なら「どっちも美味そうだな」と絶対に言います(笑)
では・・・
「1時間煮込んだ濃厚ミートソース」
「24時間じっくり煮込んだミートソース」
こうなった場合、どちらを注文しますか?
多分、24時間煮込んだ方を選びませんか?(笑)
「濃厚」という言葉が24時間の方にはないのですが、24時間煮込んでいるという時点で、勝手に濃厚だと思い込むわけですよね。
もしかすると、1時間の方は、赤ワインを入れて濃厚さを出しているかもしれません。
24時間の方は、赤ワインを使わずに、トマトを24時間煮込んで作った滑らかな舌触りのソースかもしれません。
もし、料理人がそれぞれの特徴を説明してくれれば、1時間煮込んだ濃厚ミートソースを選ぶかもしれませんよね。
これって、食べに来てくれるお客様の事を考えた、メニュー作りだと思いませんか?
素材の活かし方を知っている料理人にしか出来ないですよね。
2種類のメニューの違いを説明されて、食して、味が美味しければ、余計に美味しさ倍増しそうですけどね(笑)
他にいうと、生の肉とか、牡蠣で、食あたりとか、なる訳ないと思って食べても、なる人はなりますよね。
それって、それらを食べようか迷った時、確率論の話になるわけですよね。
家というのは、何千万も払って、数十年のローンを組んで、購入するものです。
依頼しようとしている会社の家の性能がどういったものなのか、
選定している建材を選ぶ理由はなんなのか?
色々と気になる所はあると思いますが、今日はこの辺で終わりたいと思います。
明日は、見極めポイント②「採用されている断熱性能の耐水性能に不安がないか?」を取り上げたいというか、思いっきり突っ込んで行きたいと思います。
P.S
このブログを書く題材にする為に¥540円も払って、僕自身、全く不要な雑誌を買いました(笑)
明日もお楽しみに(笑)