先日、茨城県にある『ネオマの家(ネオマワールド)』の見学&研修でした。
前回(ブログ)は3月に春の陣ということでしたが、今回は【夏の陣】
ネオマフォームという断熱材をふんだんに使った体験施設です。
赤外線カメラ(サーモカメラ)+放射温度計のダブルアイテム持参です(笑)
外気温は31℃なので結構暑い。
日射が当たる外壁は57.9℃
庇の影になってる部分は41.6℃
サーモカメラもほぼ誤差無し。
はじめは研究棟にて、前回と同じ説明を受けました。
体験棟の仕様です。
小屋裏で14帖用のエアコン1台で夏は冷房
階段下の6帖用のエアコン1台で冬は暖房
こういった手法は、設計側のそうなのですが、施工者が設計者と同じ意識をもって家づくりが出来ないと、実現不可能な高性能な住宅です。
季節ごとに、エアコン1台で過ごせる家って、家の性能としてはものすごく高く、これから日本が当たり前のように建てて行かなくてはいけない家のモデルであるとも言えます。
で、今回も撮影不可なので、文字だけでのレポートになりますがご了承ください。
そして、初めに言っておきますが、性能的なものに、ケチをつけるつもりは一切ございません。
あくまでも、僕個人が感じた感想を述べさせていただきます。
【体験レポート】
外気温31℃ 午後13時30分
見学には予約時に午前と午後を選択できたが、暑くなる午後を迷わず選択。
10人以上見学者がいたので、室温上昇する前に真っ先に体験棟の中へGO!しました(笑)
外にいると汗が結構出るくらいに暑い感じでしたが、中に入ると、とても涼しく、『非常に快適』だな!
と思ったのが初めの感想です。
取り合えず、1階リビングの床・壁・天井の表面温度を測ってみると・・・
ほぼ25~26℃くらい。
14帖エアコンで設定温度22℃のようです。
- 「1階」
- 室温は26.5℃
湿度は52%でした。
別な機械では、
室温26.8℃
湿度57%でした。
- 「2階」
- 室温は27.1℃
湿度は51%
- 「小屋裏(冷房用エアコン設置スペース)」
- エアコン設定温度22℃
室温は25.5℃
湿度は63%
エアコンの冷気が下りるルーバーの所は
室温は27℃
湿度は62%
1時間くらいは居たでしょうか。
10人以上が同時に入ると・・・
当然室温も上がります。
二酸化炭素濃度も上がります。
湿度も上がります。
15時20分頃の終盤、贅肉という断熱材で覆われている僕は、額が汗ばんできました。
痩せている方でも「暑い~」「暑いな~」という声が聞こえてきました。
体験棟にINした時は、非常に快適と思ったものが、家の中にいる人数によって、終盤は「暑い」と感じる人が僕も含めて増えた。
室温を見て見ると、約1℃上昇していました。
「1℃くらい上がってんじゃないの~?」
という声もあったのですが、その通りでした。
1℃というものが、大した事ないかもしれませんが、工事費に換算すると、50万~100万くらいの感じがします。
これまで、ホームズ君住まいのエコナビというソフトで「一番寒い冬の朝の外気温マイナス8.℃7」という環境で、無暖房の状態でシミュレーションしてみると、
寝室の温度が10℃以下になってしまう次世代省エネ基準より、
200万UPで2℃以上上昇して12℃くらいを保てるようになり・・・
次世代省エネ基準より300万UPで14~15℃を保てるような感じになる。
300万アップだとしても、35年ローンで考えたら金利にもよりますが月々の返済がプラス¥9000円UPくらいになる感じです。
マイナス8.7℃の深夜に無暖房で14~15℃を保てるのであれば、当然、他の時間にはもっと室温が高い。
つまり、日中に取り入れた太陽熱をどれだけ逃がさないのかがポイントでもあり、逆に太陽熱を取り込めないと、エアコンなどの設備機器に頼る事になるという事です。
高断熱住宅だと、年間の冷暖房費は¥60坪くらいのお宅で、24時間連続全館空調で年間17000円程度になる。
月々ではなく、年間ですからね?
ちなみに機器は「パッシブエアコン」です。
はじめに、こんな説明を受けました。
冬の暖房費¥5,660円
夏の冷房費¥5,646円
シミュレーション設定温度は
冷房温度27℃
暖房温度20℃
という事。
再度話を整理しますが・・・
シミュレーション設定温度は冷房27℃。
実際に動いている冷房の設定温度は22℃。
まず、ここの時点で実際にはもっと冷房費はかかっているのでは?という疑問が生まれましたが・・・
実際の状況からいうと、
冷房設定温度22℃で室温26~27℃という事になる。
何故22℃かというと、稼働が停止しないように低めの設定になっているみたいです。
15時くらいの時に、どこが一番快適な場所だったか?と聞かれたら
「エアコン設置している小屋裏」
と答えます。
25.5℃でしたからね(笑)
案内してくれた担当の方は、結構大柄な方でしたが、その方も「小屋裏」が一番快適
と話していました。
理由としては「気流」というか、エアコンの風を感じたから(笑)
僕はじっとしている訳でもなく、絶えず動いている感じでしたので、汗をかきやすい状態になっていたと考えられます。
いずれにしても、今回の様な体験棟は、実際の住まいとは異なる部分があるかとは思います。
実際に設計して、お客様に提案する時、気をつけなければならないと思っている事がいくつかあり、
今回の「夏の陣」を体験して、設計の方向性がしっかり見えた部分もありました。
ここまでは、室温と実際の快適性がどうだったか?というレポートになります。
感想としては・・・
家の性能・手法に関しては、素晴らしい!
快適か?に関しては、少し暑かった
という感じです。
ここからは、【表面温度のお話】
実は、前回の春の陣でも気になっていた事ですが、床・壁・天井の表面温度が、同じフロアのリビングや廊下やトイレで1~2℃違うという事。
新住協に加入したのも今年の2月なので、Q1.0住宅の見学は「寒い時期」にいくつか体験していますが、
思えば完成後の高断熱住宅で、夏を体験したことがない。
何となく違和感というか・・・
「いつもと違う」感がある。
いつもと違うというのはですね、表面温度がどの部屋もほとんど同じものが、Q1.0住宅なのです。
1階と2階で1℃~2℃違うのは仕方ないのですが、ネオマの体験棟は、リビングと廊下などで1℃違うという事が、「何故?」なのかもしれません。
これは僕が今まで表面温度を測った経験から、データを見返して気が付いた事ですが・・・
Q1.0住宅は冬でも、ほとんど暖房をつけていない時に見学している為、室内温度にムラが無い。
一方、ネオマの体験棟は、エアコンをつけている状態で春も夏も見学しているという事。
恐らく、このような違いから、表面温度の差が出ているのだろう。
ましてや、今回のネオマの家は、リビングが一番温度高かったので、窓からの熱の影響を受けているのだろう。
そんな事を再確認しながら体験出来ました。
【普段の私の考え】
最近、住宅の設計に関して特に考えている事があります。
それは、住まい手の生活が、僕の提案している設計に「苦痛なく」住めるのかどうかです。
設計の通りに住んでいただけるように、「住まい方説明書」を発行するのは有効な手段だと思いますが、
住まい手の性格・行動をまったく考慮せず、シミュレーション通りに生活しないと光熱費が安くならない、快適にならないなど・・・
住まい手に無理強いしないと、家の性能が保たれないなら、そんな家は、設計者の
「マスター〇ーション」
でしかないと思っています。
つまり、凄い性能の家を設計したという「自己満足」に過ぎないという事。
設計通りに住んでもらった、住まい手が「苦痛」感じ、変なストレスが生じる家となってしまったら、家の性能以前の問題だと思っています。
エアコンフィルターを3年も掃除をしない人に、床下エアコンを提案して良いのだろうかと考えてしまいます。
例えば、今回の家の設計と性能の全く同じものを、お祭りやホームパーティーの時、10人くらいの大勢でワイワイガヤガヤする事が多かったり、料理教室をするような住まい手だったらどうだろうかと考えてみる。
実体験から、前回の春の陣ではそんなに暖かくないと感じ、今回の夏の陣では少し汗ばんだ。
なので、「夏涼しく、冬暖かい」
という事が絶対ではないというシチュエーションもあるという事を提案者も住まい手も理解していないといけないし、
暑いと感じる時に緩和出来るような処置・アイテムを導入するのも一つのアイディアだと思っています。
例えば・・・
夏のお風呂上りは、とても暑い。
そんな時、気流を感じて涼しんだリする為の扇風機やエアコンがあってもいいと思っています。
↓実際に私の設計で設置した洗面所の扇風機
何となく、簡潔的にまとめると・・・
UA値などの家の性能は、設計力よりも、しっかりとした施工力によって確かなものとなる。
つまり、高気密高断熱住宅というのは、当たり前のような絶対条件。
エアコン1台で家全体を暖める事を可能とする。
しかし、住まい手の性格や住まい方、自分の発熱状況によっては、「快適性」と「家の性能」は一致しない。
温熱環境と向き合うのが住まい方として楽しんでくれる方じゃないと、エアコン1台で快適環境を造り出せる性能の家でも、人によってはストレスハウスになってしまう。
つまり、自分がシミュレーションして設計して、提案している内容と同じことを住まい手がしてくれるのかが重要と思います。
エアコンなどの設定なども含めて、
『ほとんど何もしなくても家が暖かい・涼しいを実現できる』
という環境を提案出来ないと、本当の意味で、
「快適と感じる高性能住宅」
を普及させるのは難しいと思っています。
スマホが難しいと感じてガラケーを使う人がいるように、
家に住むことが苦痛にならないようにするには、UA値などの数値だけで「最高の家」と判断してはダメだと思うのです。
何故なら、電力自由化によって、自分にとって安い電気が選べる時代になったのに、ほとんどの人が東京電力を愛しているせいなのか、自分の家にとって、最適な電気料金のシミュレーションすらしていないんですから(笑)
理由は簡単で、面倒と思うからが1番の理由ではないでしょうか?(笑)
ちなみに我が家はサニックス電気にしています。
それはブログで書いてます。
「電力自由化」
ちょっとレポートから話が脱線しますが・・・
「PMV」
という言葉を知ってますか?
「予想平均温冷感申告」
という意味です。
??はあ!?という感じだと思いますが、
一級建築士試験でも頻繁に出てくる単語です。
『一級建築士試験問題』
Q
【新有効温度ET*は,人体の熱負荷に基づき,熱的中立に近い状態の人体の温冷感を表示する指標のことである】
A:正答×
【PMVは,人体の熱負荷に基づき,熱的中立に近い状態の人体の温冷感を表示する指標のことである】
が正しい文言です。
さらに・・・
Q
【PMVは,空気温度,平均放射温度,湿度,風速,着衣量,活動量をもとに,ある条件下における個人の温熱感を評価する指標である】
A:正答×
「個人の温熱感」って所が誤りです。
大人数を対象にして、快適かどうかの判断をする感じです。
温熱感を・・・
非常に寒い(-3)
非常に暑い(+3)
の範囲の数値で表します。
例えば100人を対象として・・・
不快を訴える人を【予測不満足率】という言い「PPD」で表します。
PPDが全体の・・・
99%(100人中99人)になるとPMVは【3】
75%(100人中75人)になるとPMVは【2】
25%(100人中25人)になるとPMV【1】
って感じです。
なので、PMVは・・・
1だとそれなりに暑いか寒い人の割合が多い
2だと結構暑いか寒い人の割合が多い
3だとほとんど全員が暑いか寒いを訴える
という事になります。
これも一級建築士試験でも出てくる問題ですが・・・
Q
【ISO(国際標準化機構)ではPMVによる快適範囲として、-0.5<PMV<+0.5を推奨している】
正答:〇
となっています。
上記のグラフ拡大です。
ISOでの快適範囲は・・・
PMV-0.5~+0.5の範囲で
PPD=10%
って事になります。
つまり・・・
温冷感が、暑いか寒いかが「どちらでもない(+0)」はPPD=5%
ですから・・・
目指すべき温熱環境というのは、どちらでもないという・・・
【何も感じない】
という環境が、大人数に対しては「快適」となる。
またまた一級建築士の試験問題
【予測平均温冷感申告(PMV)は、主に均一な環境に対する温熱快適指標であるため、不均一な放射環境,上下温度分布が大きな環境及び通風環境に対しては適切に評価できない場合がある。】
正答:〇
つまり、エアコンや扇風機の風が人によってばらばらに当たるような環境や、局所不快感の限界温度4℃を大きく超えているような環境では、PMVは適切に評価出来ないという事です。
少し前に、東大の前真之先生のセミナーを受けましたが、このPMVの事を話されていました。
その時のレポートに関しては、別な機会でブログ書きたいと思います。
【感想・まとめ】
というわけで、色々お話しましたが、初めに申したように、家の性能を酷評してるつもりは全くありません。
室温などを見て見ると、その施工の凄さは一目瞭然です。
エアコン1台でこれだけの全館冷房が出来ているのは、設計と施工でかなりの戦闘力が高い証拠です。
気になった点としては、エアコンの設定温度を22℃にしなくては、あの環境を保てなかった事が、僕はエアコン1台での限界といいますか、「パッシブエアコン」を推したくなってしまっています。
家全体が吹抜け空間として一体的な空間であれば、「ルームエアコン1台(夏・冬それぞれ)」、
5部屋くらい完全分離された部屋があるのであれば、「パッシブエアコン」
を素直に選定した方がいいように思っています。
Q1.0住宅レベルの性能であれば、60坪くらいのお宅でも年間¥14000~¥18000円くらいになります。
今年2月(千葉県の松戸市)のパッシブエアコンの体験レポートはこちら↓
快適かだったか?という事でいえば、初めは快適でしたが人数多くなると、一旦素直に窓開けようぜ!って感じでした(笑)
つまり、暑かったという事です。
それは僕の体系的なものもあると思います。
やはり、面倒な事はせず、何もしなくても快適な環境を目指したいなと思いました。