長期優良住宅について解説致します。
長期優良住宅のメリット・デメリットは何なのか?
長期優良住宅にするとコストは上がるのか?
など、ネットに出回る多くの勘違いを解きながらの解説に心掛けたいと思います。
- 長期優良住宅とは?
- 長期を取得すれば、減税や補助金、ローン金利の優遇処置が受けられます。
詳しくは国土交通省のHPに記載があります。
従来の「つくっては壊す」スクラップ&ビルド型の社会から、「いいものを作って、きちんと手入れをして長く大切に使う」ストック活用型の社会への転換を目的として、長期にわたり住み続けられるための措置が講じられた優良な住宅(=長期優良住宅)を普及させるため、「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」が平成20年12月5日に成立し、平成21年6月4日に施行されました。 - 制度の概要
- 長期優良住宅とは、長期にわたり良好な状態で使用するための措置がその構造及び設備に講じられた優良な住宅のことです。長期優良住宅の建築および維持保全の計画を作成して所管行政庁に申請することで、基準に適合する場合には認定を受けることができます。
新築についての認定制度は平成21年6月4日より、既存の住宅を増築・改築する場合の認定制度は平成28年4月1日より開始しています。 - 長期優良住宅にするとどんな事が待ち受けている?
- まず、長期優良住宅の申請には多くの設計図面と書類が必要になってきます。
ラファエル設計の場合、とても簡単に申請出来る環境が整っていますので、「大変だ」という工務店に依頼する事は絶対にやめましょう。
申請時に「長期優良住宅の建築及び維持保全に関する計画」という書類を出します。
認定後は、認定を受けた計画に基づき住宅を建築するのは当たり前なのですが、皆さんが気になるのは「住んでから」だと思いますので、メリットなどは後で説明します。
建築工事の完了後は維持保全を行うとともに、建築・維持保全の状況について記録を作成し、保存していただくことになります。 - 多くの人達が勘違いをしている事
- 皆さん、この長期優良住宅が出来た背景を、もう一度考えてみてください。
「いいものを作って、きちんと手入れをして長く大切に使う」
という事が目的なのです。
これも多くの人達が勘違いしまくりの事なのですが、『大手ハウスメーカーならきちんとやっている』という勘違い。
『きちんとやっている』ってどんな事だと思っていますか?
残念な事に、こういった長期優良住宅のような制度を設けないと、最悪な家づくりがバンバン行われいていくのです。
常識的に考えてみてください。
長期優良住宅の様な制度が無くても、それに合致するような家づくりをするのが当たり前だと思いませんか?
でも、全くされていないから、このような制度が出来るのです。
それは、ハウスメーカーだとしても出来ていません。
ネットには、長期優良住宅について、色んな人たちが意見を述べています。
その中に納得された事はありますでしょうか?
まず、長期優良住宅の維持保全というのは・・・
①構造躯体
②屋根・外壁・開口部
③設備
について、30年の維持管理項目と点検時期の目安、更新・取り換えの目安を判断したり実施するものです。
もっと細かく点検項目を説明すると、
基礎、土台、床組、梁、軸組、小屋組、天井組、屋根、外壁、雨どい、軒裏、バルコニー、開口部、配管設備についてだいたい10年ごとを目安に点検する計画にすると思います。
でね、ここが大問題。
この維持保全に、「コストがかかるから長期優良住宅にすると、余計にお金がかかる」
という誤認識。
一級建築士の専門家までも、「自分の代で取り壊すなら、コストを掛けてまで長期にするメリットはない」とか言っている始末。
ハッキリ言って、長期の認定取らない限り、メンテナンスなんか、出来る部位しかしないですし、メンテナンスし易い設計を考える人なんて、一握りです。
長期を取得しようがしまいが、10年経って外壁にカビが生えていたら、早急に対処すべきですよね?
長期優良住宅にすると、余計にお金がかかるとか言う人は、こういったのを点検する必要もないし、対処するコストも余計にかかるって思ってるのですかね?
皆さん、長期優良住宅を取得しないご自分の家が、長期優良住宅基準になっているとお思いですか?
残念ながら、工務店の場合は特にそうなっている所は少ないと思いますよ。
ハウスメーカーは、結構標準で長期を取得できる仕様になっているのではないでしょうか?
がしかし、仕様というのは「点検できる仕様」というだけで、劣化などに対して、防御するような設計には、全くもってなっていないのが現状です。
それはハウスメーカーも含めてです。
皆さん、今度、外壁の北側などをよ~く見て見てください。
ハウスメーカーの家だって、黒くなっているのが多く見受けられると思います。
原因は、壁内結露によるカビか、藻です。
下記は、有名なハウスメーカーで建てたお宅の外壁(北側)です。
サーモカメラで見ると良く分かりますが、梁と柱が思いっきり熱橋(ヒートブリッジ)になっている為、ハッキリと出ています。
そして、柱間、間柱間が全体的に黒くなっているのが分かりますか?
これは、通気工法の外壁だとしたら、通気の排出能力が足りないのもありますし、家の中からの「漏気」が原因であります。断熱材の施工も問題ありな部分もありますけど・・・。
これって長期優良住宅なら、そうならないと思いますか?
残念ながら、なります!
そして、長期優良住宅でもそうじゃなくても、こうなるのが「普通」なのが、日本の多くで行われている家づくりです。
ハウスメーカーに文句を言っても、どうにもなりません。
僕が思っている事は、こうなる住宅に、何千万も出して依頼するのは何故か?という事。
答えは、皆さん、「知らない」からなのですよね。
家づくりの工法は、10年前も今も、全く変わっていません。
高い断熱材を使用したとしても、このように「漏気」は防げません。
そもそも、漏気は長期優良住宅に関係ないという不思議さ。
許容応力度の構造計算をしなくても、別な方法で耐震等級3を取得出来て、長期優良住宅になる不思議さ。
UA値が、玄関とか無断熱でも、数値をクリア出来れば、長期優良住宅になる不思議さ。
↓真冬の朝、無暖房だとこんな寒い室温の家でも、長期優良住宅の性能はクリアします。
ラファエル設計が造っている家は↓です。
無暖房です。
ハッキリ言って、日本の家づくりの現状から考えると、長期優良住宅の認定受けても、『住まい手に取っての長期優良』という考えになると思ってません。
ラファエル設計は、ZEHでも長期優良住宅でも、BELSの★★★★★(★5)の性能もクリア出来る家づくり(設計)をしています。
基本的に、認定を受ける為にその基準に合わせる家づくりはしていません。
すべて、それらの基準をクリア出来る設計をしています。
これが、本来、住まい手にとって、メンテナンス費用もかからず、長年いいもの(長く住める家)だと思っています。
最後にまとめると・・・
長期優良住宅にするとメンテナンス費用が生じるかどうかは、設計・施工の段階で、漏気や内部結露の対策をしっかり取っているか?という所に依存します。
次世代省エネ基準のUA値をクリアしたくらいでは、正直、メンテナンス費用の大きな削減にはならないと思います。 - 長期優良住宅のデメリット
- 多くの方が言うであろう「コストがかかる」
ラファエル設計的に、こんなのは全然デメリットでも何でもないです。
長期優良住宅の認定を受ける場合、ラファエル設計の場合はUDIという確認検査機関を利用し、技術的審査を終えた後、市役所に提出します。
この場合審査料として・・・
確認検査機関(UDI)で¥48000円
市役所で¥6000~¥18000円
くらい必要になって来ます。
高い市役所の所ですと、申請料だけで¥66,000円必要になります。
確認申請料は、床面積によもよりますが・・・
確認申請で¥25,000円
完了検査で¥25,000円
合計¥50,000円くらい必要になります。
こうなってくると、合計で10万円をこえる訳です。
確認申請は基本的に必ず必要な地域が多いですので、必要経費です。
で、長期優良住宅にした場合、メンテナンスコストや減税にメリットを感じない人は、長期優良住宅の申請料+申請業務で10万以上となる場合、「そのお金でデザイン照明とかデザイン家具を変えるのに~」と思うわけです。
僕から言わせれば、それなら床暖房とかエアコンだらけの家を建てないで、電気代が安くなる家を造った方が、よっぽど快適で、光熱費をそれらのデザイン家具や照明に回せると思うのですけどね。
- 長期優良住宅のデメリットを強く考える人達
- 正直、冬はかなり寒い家を造っている家しか知らない人たちだと思った方がいいと思っています。
予算を勿体ないと思って、長期を止めた人たちを参考にする必要は全くないです。
補助金も必要なく、長期を取得しなくても、依頼先の会社が、長期と同レベルでメンテナンスが出来るようにしてくれていたら、全然問題ないと思います。 - 長期優良住宅のメリット
- 長期を取得すれば、減税や補助金、ローン金利の優遇処置が受けられます。
- 所得税
- 住宅ローン減税が、一般住宅に比べて以下の通り拡充されます。
住宅ローン減税 一般住宅 長期優良住宅 控除対象借入限度額
H26.4~H33年12月末迄4,000万円 5,000万円 控除期間 10年間 10年間 控除率 1.0% 1.0% 最大控除額 400万円 500万円 - 主な要件
- ①その者が主として居住の用に供する家屋であること
②住宅の引渡し又は工事完了から6ヶ月以内に居住の用に供すること
③床面積が50㎡以上あること
④店舗等併用住宅の場合は、床面積の1/2以上が居住用であること
⑤借入金の償還期間が10年以上あること
⑥合計所得金額が3,000万円以下であること - 適用を受けるために必要なこと
- 確定申告の際、以下の書類を税務署に提出。
①明細書
②残高証明書
③登記事項証明書
④請負契約書又は売買契約書の写し
⑤長期優良住宅認定通知書
⑥住宅用家屋証明書※又は認定長期優良住宅建築証明書* 等
※保存登記等の際にも、登録免許税の軽減を受けるために必要な書類となっています。
あらかじめ、その写し等を司法書士等から入手しておいてください。
*認定長期優良住宅建築証明書は、登録された建築士事務所に属する建築士、
指定確認検査機関、登録住宅性能評価機関のいずれかに発行を依頼して下さい。
- 投資減税型の特別控除
- 個人が、長期優良住宅の普及の促進に関する法律に規定する認定長期優良住宅の新築等をして、居住の用に供した場合には、標準的な性能強化費用相当額※(上限:平成26年3月末までに居住を開始した場合は500万円、以降は650万円*)の10%相当額を、その年分の所得税額から控除(当該控除をしてもなお控除しきれない金額がある場合には、翌年分の所得税額から控除。)する。
投資減税型の特別控除 木造 床面積1㎡につき43,800円 - 主な要件
- ①その者が主として居住の用に供する家屋であること
②住宅の引渡し又は工事完了から6ヶ月以内に居住の用に供すること
③床面積が50㎡以上あること
④店舗等併用住宅の場合は、床面積の1/2以上が居住用であること
⑤合計所得金額が3,000万円以下であること - 適用を受けるために必要なこと
- 確定申告の際、以下の書類又はその写しを税務署に提出。
①明細書 ④長期優良住宅認定通知書
②登記事項証明書 ⑤住宅用家屋証明書
*又は認定長期優良住宅建築証明書*
③請負契約書又は売買契約書 等
平成26年3月31日までに居住の用に供した場合は、上記に加え、床面積算定調書等、構造別の床面積を明らかにする書類※ (混構造の場合のみ)が必要となります。
※保存登記等の際にも、登録免許税の算定のために床面積調書等と呼ばれる、構造別の床面積を明らかにする書類が必要となっています。あらかじめ、その写し等を司法書士等から入手しておいてください。
*保存登記等の際にも、登録免許税の軽減を受けるために必要な書類となっています。あらかじめ、その写し等を司法書士等から入手しておいてください。
*認定長期優良住宅建築証明書は、登録された建築士事務所に属する建築士、指定確認検査機関、登録住宅性能評価機関のいずれかに発行を依頼して下さい。
- 登録免許税(平成32年3月31日までに取得した者が対象)
- 住宅用家屋の所有権保存登記等に係る税率を一般住宅特例より引き下げる。
登録免許税 本則 一般住宅特例 長期優良住宅 所有権保存登記 0.4% 0.15% 0.1% 所有権移転登記 2.0% 0.3% 戸建て0.2%
マンション0.1%- 主な要件
- ①その者が主として居住の用に供する家屋であること
②住宅の新築又は取得から1年以内に登記をすること
③床面積が50㎡以上あること - 適用を受けるために必要なこと
- 登記を行う際に市区町村が発行する住宅用家屋証明書が必要
- 不動産取得税(平成32年3月31日までに新築された住宅が対象)
- 新築住宅に係る不動産取得税について、課税標準からの控除額を一般住宅特
例より増額する。一般住宅 長期優良住宅 1,200万円 1,300万円 - 主な要件
- ①都道府県の条例で定めるところにより申告をすること
②床面積が50㎡以上240㎡以下であること - 適用を受けるために必要なこと
- 特になし
- 固定資産税(平成32年3月31日までに新築された住宅が対象)
- 新築住宅に係る不動産取得税について、課税標準からの控除額を一般住宅特例より増額する。
一般住宅の場合、5年間半額になります。
ここでも、たった2年の違いかよ!って思うこと自体ナンセンスです。
初めから言っているように、長期優良住宅というのは、「いいものを作って、きちんと手入れをして長く大切に使う」がコンセプトです。
一般住宅特例 長期優良住宅 戸建て 3年間 半額 5年間 半額 マンション 5年間 半額 7年間 半額 - 主な要件
- 床面積が50㎡以上280㎡以下であること
- 適用を受けるために必要なこと
- 長期優良住宅認定通知書又はその写しを添付して市区町村に申告。
- 地域型住宅グリーン化事業(補助金)
-
- 長寿命型
- 高度省エネ型
- 優良建築物型
- とあり、長期優良住宅の場合、「長寿命型」に該当します。
- 長寿命型
- 110万円を上限
- 高度省エネ型(認定低炭素住宅、性能向上計画認定住宅)
- 110万円を上限
- 高度省エネ型(ゼロ・エネルギー住宅)ZEH
- 140万円を上限
- 優良建築物型(認定低炭素建築物等一定の良質な建築物(非住宅):木造、新築)
- BELSなどがここに該当します。
補助金の額は、当該建築物の建設工事費のうち一定の良質な建築物とすることによる掛かり増し費用相当額の2分の1以内の額。
当該補助金の額の算定に当たっては、当該建築物の建設工事費(地域型住宅グリーン化事業 グループ募集要領」に記載している額)の1/10以内の額で、床面積1㎡当たり1万円を上限。
- 融資(住宅ローンの金利引下げ等)
- フラット35関係がメジャーですね。
※下記は31年3/31日までの申し込み受付分に適用なので、その都度確認が必要です金利引下げプラン 金利引下げ期間 金利引下げ幅 フラット35S
金利A当初10年間 フラット35の借入金利から
年▲0.25%フラット35S金利B 当初5年間 7年間 1/2
こんな感じですが、銀行などで変動でもっと安い金利でローンを組む場合は、ここでも長期優良住宅のメリットは感じないかもしれませんが、初めから言っているように、長期優良住宅というのは、「いいものを作って、きちんと手入れをして長く大切に使う」がコンセプトですから、金利の引き下げにメリットを感じかという話ではないと思っています。
- まとめ
家づくりというのは、長期優良住宅の認定をすれば、長期的に優良な家になるか?というとそれは違います。
その資格を得た住宅・・・というのも違うと思っています。
ラファエル設計は、基本的にQ1.0住宅が標準です。
Q1.0住宅というのは、冬の暖房エネルギーを次世代省エネ基準の半分以下、にした住宅であり、50年以上断熱材の劣化がほとんどなく、安心して住める住宅です。
Q1.0住宅にすると、熱橋が殆どなくなるので、内部結露なんて皆無ですし、さっきの写真のようにカビが生えたりしません。
通気層の厚みも普通の倍くらいありますので、通気層での結露の心配もありません。
つまり、長期優良住宅を取得すれば、メンテナンスコストが上がるのではなく、シート付の断熱材を使ったり、熱橋(ヒートブリッジ)へのアプローチが全然出来ていない家が、メンテナンスコストが上がるのですよ。
我々が家の構造材に使う「木」は、50年以上、60~100年かけて育った木の生まれ変わりです。
明治の時代から、木を守り続けてきた「林業」の人達に、恥ずかしくない家づくりを、当たり前にするのが、「感謝」というものではありませんかね?
基本的に、防水や窓などもそうですが、メーカー保証は、10年です。
これからの家づくり・・・
- ZEH
- 長期優良住宅仕様
- BELS★★★★★
- 耐震等級3(許容応力度計算で)
- UA0.34、Q値1.0前後
これらが標準で行われれば、何も問題はないはずです。
後は、施工する人たちの知識と技術があれば、「絵にかいた餅」ではなく、ちゃんとした、住ま手の事を本当に考えた家が出来ます。
最後に・・・
ラファエル設計は、長期優良住宅の申請業務が大変か?
楽勝で終わります。