Q:Low-eガラスの選定基準は?(断熱・遮熱タイプ)

よくある相談の1つである窓の選定。

多分、これは設計者や工務店などの人でも分からない人が多いのでは?と思います。

ハッキリ言って、これを適切に選定するには、「難易度高い」です。

 

↓こんな2つのパターンの質問がよくあります。

依頼している工務店から

「全部断熱タイプの窓にしましたと言われました」

「全部遮熱タイプの窓にしましたと言われました」

僕からしたら、どちらもちょっとあり得ない話です。
通常で考えたら・・・。

 

下記でLow-eガラスの窓と断熱の関係を記載しています。

ちょっと抜粋したり追記して説明します。

各季節の日射量

夏至の水平面の日射量はダントツですよね?
※水平面以外は全て鉛直面です。
ちなみに、これを見てお分かりのように、東と西は、日射量が全く同じです。
春分と秋分も同じです。
日射量は同じなのに何故西日は嫌われるか・・・
それは、西日は太陽の熱を纏って、暑いからです。

つまり、夏至は屋根面や地面が一番陽が射すという事です
夏至というのは6月21前後になります。
ここで注意なのは・・・
夏至から秋分、冬至に季節が過ぎるにつれて、太陽高度は低くなり、南側の壁面の日射量が増えてくるという事。
ようするに、夏の日射=夏至ではないという事です。
6月よりも、8月など、の暑い時期の方が壁面に当たる太陽は大きくなるわけです。
よって、庇や断熱ブラインドや外付けブラインドで日射遮蔽(日射カット)してやらなければ、冷房負荷が増大し、エアコンの効き目が悪くなるという事ですね。

これ、非常に勘違いしている人が多いです。
『Low-E複層ガラス』遮熱タイプと断熱タイプ
  • 2枚の複層ガラスのうち、外側のガラスの・・・
【室側』にLow-E金属膜を設けたものが『遮熱タイプ』
(出典:YKKAPホームページ)
【室側』にLow-E金属膜を設けたものが『断熱タイプ』別名【取得タイプ】
  • 高防露
  • 高断熱
  • UVカット
  • 遮熱
上3つは両者とも同じです
ざっくりと説明すると、違うのは『遮熱』をするか、しないかです。

と言うわけで、別なページとは違った視点で新たに解説します。

 

遮熱タイプと断熱(取得)タイプ
分かりやすく説明すると・・・

遮熱か断熱にする理由というは、「太陽」を「敵」か「味方」としてみるわけです。

「敵」となるのは夏です。
「味方」となるのは冬です。

夏は太陽が「敵」なので家に入れたくありません。
遮熱くんは遮熱という武器を持っているので頑張って防いでくれます。
断熱くんは無防備なのでカーテンなどに守ってもらわないと、侵入を防げません。

冬は太陽が「味方」なので、家に入れたいのです。
断熱くんは、超ウェルカムで迎え入れてくれますが、
遮熱くんは、味方の太陽を遮熱して倒してしまいます。

結果・・・
冬なのに窓を開けた方が暖かいという現象が起きます。
全部「遮熱タイプ」の家
夏涼しいが、暖房つけないと冬は超寒い
全部「断熱タイプ」の家
断熱カーテン・ブラインドがないと、夏は超暑い&冷房効かない。
日射が室内に入れば、冬は暖房無しでも暖かい

という感じで夏と冬でどちらかに分かれます。

 

Low-eは遮熱も断熱タイプも少ししか変わらないというのは間違ってませんが・・・
その「少し」がとても重要です。

平面図を見た時に上が北だとして、セオリー的な話をすると・・・

東西北は遮熱タイプで南断熱

北が30~45℃振れている場合、太陽がその窓にどれくらい日射があるのかを考えています。
この場合、完全な東西南北は存在しません。

北東、南東、南西、北西という感じになります。

冬の日射に有効な窓を「断熱(取得)タイプ」
夏の日射に有効な窓を「遮熱タイプ」

とします。

北:方位によって遮熱か断熱
東:遮熱
南:断熱
西:遮熱

もし、遮熱にするとガラスの色が変わるという理由であれば、ちょっとヤバいレベルです(^^;)
LIXILだとグリーン、YKKだと青とか選べるんですよね。

西日を遮る為の木があるならば、それは日射遮蔽に有効に働くと思います。
景観が損なわれるという観点はまた別な話になりますが。

 

冬の熱を取り込む為に西側を断熱タイプにして、夏は日射遮蔽の為に断熱性の高いカーテンやプラインドをつけるという理由であれば、東西を断熱タイプにしている理由はしっかりしています。

遮熱タイプ
西日対策と紫外線対策に効果的です。
家具の色あせや、畳の色あせ防止に効果的です。
カーテンやブラインドが必要なかったり、目隠し程度の機能でOKだと思います。

遮熱ではなく、断熱タイプにした場合、冷房が効かなくなる事に繋がりますので、断熱性の高いカーテンなどが必要という事です。
断熱タイプ
東西を断熱タイプにしたいという場合、夏は西日(太陽熱の温度が高い)の影響をかなり受けますので、遮光カーテンや断熱性能の高いカーテン・ブラインドが必要です。

当然、南側の窓も断熱にするのが望ましいので、夏の日射遮蔽(日射カット)は必須です。
まとめ
Low-eのタイプをどの方角に設けるのが良いのか?という問題は、正直・・・
敷地の状況・周辺環境、方位にもよります。

ラファエル設計は行っているような温熱環境シミュレーションを行えば、選定に迷う事はないのですが、シミュレーションをやった事がない方に、これらの説明をしても難し過ぎて、理解出来ない事が多いようです。

結局、シミュレーションをしたことがないならば、設計者であれば、太陽がどのように当たるから、ここの窓で光熱費を稼げるな!なんて予想というか、勘なんて働きません。

単純に・・・
北:方位によって遮熱か断熱
東:遮熱
南:断熱
西:遮熱

って判断は正直間違いとも言えます。

西側でも冬の日射取得の為に、1か所大きな断熱タイプの窓を設けて、他は遮熱タイプにするなんて設計も行います。

いいですか?
全部断熱タイプにするという事は、日射遮蔽の為のブラインドやカーテンが必要なのです。
家じゅうに全部つけたら50~60万とか普通に行きますからね?
自分で通販で揃えるならもうちょっと安いとは思いますが、小さい窓まで冬の為に断熱タイプにするなんて考えは僕からしたらあり得ないです(笑)

Low-eガラスの選定に関しては・・・
●冬に対しての対策をどうするか
●夏に対しての対策をどうするか
●カーテンやブラインドはどうするか

これら3つを同時に考える事が出来て、初めてスタートラインに立てます。

そもそも、YKKやLIXILもそうですが・・・
日射取得率の悪いLow-eガラスであれば、そんなに光熱費に影響しないですから(笑)

まあ、とにかく、この窓問題に関しては、1つの事だけにフォーカスして考えたら絶対にダメという事です。

 

つまり、方位によって決めるのは、初期段階の「とりあえず」的な感じ。
後は、室内環境を考えての「窓の設計」が重要だという事になります。